Arches

Arches 業界インタビューVol.1″eスポーツ”(後編)

その他

五輪種目に採用され、選手のメダル獲得が報道されれば、世間の認知度はもっと上がるはず。

ー現状についてよくわかりました。今後eスポーツを発展させるために、どのようなアクションが必要だとお考えでしょうか?

浜村氏:Z世代は、既にeスポーツを知っていて、支えてくれていますが、上の世代は「ただのゲーム」と思っているのが日本の現状です。例えば、企業で意思決定をする方が、「ただのゲーム」と思っていらっしゃる。この認識が変わらなければ、選手を支える環境は生まれにくいと思っています。去年、経済産業省がZ世代に置けるゲームとeスポーツの広告価値について、研究成果を発表していますが、それをみても、まだまだこれからというフェースだと思います。例えば、アジア大会、オリンピックがeスポーツを正式採用するとなると、ニュースで自国が取ったメダル数は陸上がいくつ、水泳がいくつ、eスポーツがいくつという報道がなされると思うので、世間の認知度が上がるはずなんですよね。それが欧米並みになってくると、選手を経済的に支える環境が一気にもっともっと加速するんじゃないかというような期待を私たちは持っています。

ーその話でいうと、例えば、東京五輪でスケートボードの堀米選手も金メダル獲得の報道から、一気に世間の認知度が上がりましたね。

浜村氏:そうだと思います。Xゲームはちょっと前までは公園でガラガラ大きな音を立ててるヤンチャな子たちが遊んでいるというイメージが強かったはずなんです。社会的にも認知はマイナスだった気もします。でも、オリンピックという場でメダルを取った結果、スポーツ選手として認めてもらえましたよね。同じことがeスポーツで起こることを期待しています。

ー今後、日本のeスポーツの進むべき方向性について、お考えはありますでしょうか?

浜村氏:eスポーツというのは、ダイバーシティな時代にとても向いている競技なんですね。例えば2018年平昌のエキシビジョン的に行われた大会ではスタークラフトというタイトルが採用されました。その競技は韓国のプロ選手も出ていたんですけども、優勝したのはカナダ人のアマチュアの女性なんです。eスポーツと言うのは男性も女性も関係なく参加して同じ場で戦って競技として競い合うことができるんです。だから、『ジェンダーレス』であるということが言える。

それから茨城で文化プログラムとして全国都道府県大会をやった時にグランツーリスモというレースのゲームを実施しました。これも日本は強いんですけども、そこでは県の代表で12歳の小学生が参加したりしてるんですね。逆にスウェーデンでは平均年齢65歳のシルバースナイパーズというプロの選手たちもいる。小学生から高齢者の方まで一緒にできるという、『エイジレス』であるといえます。

また、5Gオンラインが繋がってきた場合、離島の子とNYの子と東京の子が同じチームでリーグ戦に参加できるんですね。その意味では『エリアレス』でもある。

さらに言うと、『ハンディキャップレス』。例えば、オリパラのパラを見ても金メダルを取られる方は、普段アスリートだったんだけども、後天的に脚を悪くしてしまったと言う形で出場して、その方がメダルを取る例が実は多かったりするんですね。でも後天的であろうが先天的であろうが、指先と脳が動いていれば、そこの競技には参加できるのはeスポーツのいいところで、実際、北海道の病院では筋ジストロフィーの患者が体が動かなくなっていく中、自分たちで競技に参加し、ハイスクールのチャンピオンチームと互角に争ったという実例も出てきたりしている。

ジェンダーレス、エイジレス、エリアレス、ハンディキャップレス。あらゆるボーダーを超えてくるのがeスポーツ。

ですから、ハンディキャップレスであったり、エリアレスであり、ジェンダーレスであったり、あらゆるボーダーを超えてくるのがeスポーツだと思っているので、他のスポーツよりずっと大きな競技者人口、ユーザー人口になるのではと期待しています。まず第一段階としてゲームという認識、ただの遊びであるという認識を取っ払って、スポーツとして認めてもらえばその先には大きなスポーツ市場が拡がっているのではと期待しています。

ーなるほど、eスポーツの可能性についてよく理解できました。では、その可能性を広げるために現状を踏まえて、まず何から始めるべきでしょうか?

浜村氏:つまるところ、eスポーツの偏見をなくさなければいけないと思っています。eスポーツの試合を、普段eスポーツを見ない人に見てもらうことが凄く重要だと思っています。例えば都道府県eスポーツ選手権をやっていて自分たちの子供達が参加すると、高校生中学生の子供達の親御さんが会場に見に来てくれるんですよ。その時に子供達が真剣に戦って時には大きな声を出して喜んだり、時には負けて泣いたり、相手のチームを褒め称え、抱き合ったりしているのを、親御さんが見て「これはスポーツですよね」とおっしゃってくれるんですよね。ですからまず見てもらうこと、感じてもらうことが一番大事なんじゃないかと僕は思っています。

ーさらにその先に必要なステップはありますか?

浜村氏:参加して欲しいなと思いますね。大きな球場だとかサッカー場は要らないですから、街のちょっとした公民館のような場所を借りて、体育館、教室でも構わないんですけど、そうした場所にPCがあって、ゲーム機があって10人20人が集まって実際、子どもと大人が対戦するという環境ができれば、本当に誰でもできるんですよ。ひょっとしたら家の中にいながらオンライン大会に参加することもできるんですね。

実際に、アフター6リーグとか社会人のリーグでは、仕事を終えた会社員が参加するリーグも生まれてきていますし、高校生のためのリーグ戦も生まれてきていますし、色んな大会が、地方の行政の方々が高齢者の安否確認のために高齢者を集めて大会を開いたり、障害のある方を集めた大会など、様々な試みが行われている最中なんですね。小学校で活躍する場がない子供達の為に、eスポーツを実験的に採用して、そこでその子たちが活躍してクラスで目立つようにすることも出来ているし、そういったことが草の根でどんどん拡がって来ています。積極的に参加していただく、もしくは見て頂くことをどんどんしていって頂ければと思います。

ー有難うございます。別の視点で先ほど、選手を育てる環境が必要といった話で、どのようにすれば選手の環境が良くなるとお考えでしょうか?また、選手の社会的地位が上がっていくとお考えでしょうか?

浜村氏:アジア大会、オリンピック出場、メダル獲得が分かりやすく選手の地位を上げられる。だいたい、スポーツの選手になるとき、最初の障害になるのが親御さんたちなんですね。そんなもの食っていけるはずがない。馬鹿なことを言うなということが多いので、そういった子どもたちの親に対して偏見を取っ払ってもらうためには、公式の大会。それもあって我々は国体と一緒に文化プログラムをやったりしているのですが、そういったところで評価してもらえる環境を作っていきたいなと思っています。

ー続いてビジネス視点で質問させて頂きます。日本企業に限らず、海外の企業の中でeスポーツとコラボしたいような要望があった場合、JeSUとして何か求めることはありますか?

浜村氏:そうですね、大会とか選手、チームをサポートして欲しいということですね。メリットは結構あると思います。テレビを見ない人たちに対して、選手がストリーミングに出て(企業の)ロゴを載せて認知を図っていくことも出来るし、大会にファンがたくさん集まっている所で、飲料を飲んでその飲料が選手の好きなものであることが分かったりすれば、その選手の飲料を(ファンは)買うでしょうし。車でも(携帯の)キャリアでもそうですし、Z世代にリーチできるかなり有効な手段だということはアピールできる点だと思います。

ーこれまでアジア等の企業とコラボした事例はありますか?

浜村氏:むしろアジアの方が日本より偏見は少ないので、台湾の大会見に行くと、家電のメーカー、車のメーカー、キャリアのメーカーなどが協賛に入っています。アジアの方が日本より理解が進んでいると思います。

今eスポーツは急激な変化のさなか。これから変わっていくところに注目を。

浜村氏:現在急激に変わっている最中なんですね。コロナの時期に試合がないから見られない。実はその裏では、水面下ではオンラインで色んな大会が行われて、たくさんのお客さんが試合を見て熱狂しているという状況は生まれていたわけですよね。幕張メッセを満員にする大会ですとか、埼玉スーパーアリーナを一杯にする大会が実は行われていたけど、意外と知られていないという状況はあったりします。実際に大会に出た人気選手たちがファッション誌の表紙を飾ったりだとか、ファッションブランドとコラボしたり、若者たちの遡及というのは実際に始まっているというのは実際にあるので、よく知ってほしいな、よく理解してほしいなというのがあります。難しい面もありますが、今を見て頂くとちょうど、今年から来年再来年あたりが、これから変わって行くところなので注目して頂ければなと思います。

ー有難うございます。最後に読者へのメッセージはありますか?

浜村氏:日本のeスポーツという事で言うと、元年が2018年と言われ、新語流行語大賞にも選ばれました。逆に言うと日本のeスポ―ツはちょうど伸びていくときにコロナに当たってしまい、一回投資をしてこれから伸びるだろうと思った方々が、結果をみて、期待以下だったと評価しているはず。実際に大会も行われなかったし、応援も出来なかったから。でもこの裏ではeスポーツにプラスの環境というのはいっぱい生まれてきたというのは間違いないと思っています。26年になったら日本の愛知県でアジア競技大会でもeスポーツ行われますし、企業の方で投資先として、もう一回再注目して頂ければなと思っています。

トップ ニュース Arches 業界インタビューVol.1″eスポーツ”(後編)