PE転職の選考対策|選考フロー、志望動機、面接対策などのポイントを解説

PE(プライベート・エクイティ)ファンドは、年収レンジが高く、やりがいのあるハイレベルな仕事ができることから、優秀なビジネスパーソンにとって非常に魅力的なキャリアパスです。しかし、その選考過程は非常に厳しく、十分な対策なしでは突破は困難です。
特に未経験からPE業界を目指す場合は、書類選考や面接でどこまで即戦力としてアピールできるかがポイントとなります。本記事では、PE選考における全体像から、出身業界別の選考対策、職務経歴書・志望動機の書き方、面接準備、英語対応、さらには未経験からの転職成功法まで、実践的な対策を徹底的に解説します。
1. PEファンドの選考フローと特徴

PE転職の主な選考フローとは
PEファンドの選考は一般的に以下のような流れで行われます。
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書類選考(職務経歴書・レジュメ)
まずはファンドごとの採用方針に沿って書類がふるいにかけられます。ここで約7〜8割が落とされることも珍しくありません。 -
一次〜二次面接
ジュニアからミドルクラスのメンバーが担当します。
一方で面接の初めから代表が登場したり、パートナー陣のみが面接の全過程を担当することも多々あります。
これまでの業務経験やスキルを深掘りされます。 -
ケーススタディやLBOモデリング
実際の投資案件を模した演習が課されることもあります。Excelスキルだけでなく、投資判断のロジックが問われます。 -
パートナー面接・リファレンスチェック
ファンドのカルチャーにフィットするか、リーダーシップの素養があるかを最終的に見極めます。 -
オファー面談・条件交渉
複数段階の選考を通じて、即戦力と文化適合性をバランス良く判断されるのがPE転職の特徴です。
他業界との違いと求められる資質
PEファンドの選考では、「自分で考え、動き、成果を出せる」ことが何よりも重要です。従来の事業会社のように、組織や仕組みに依存して成果を出してきた場合は、そのままでは評価されにくい側面があります。具体的には、以下のような資質が重視されます。
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自律的に物事を推進するリーダーシップ
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経営者と対等に議論できる視座の高さ
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数字を基にした冷静な意思決定力
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ビジネスのバリューアップに向けた提案力
選考に向けた対策としては、過去の経験の中からこれらに合致するエピソードを選び、整理しておくことが欠かせません。
未経験者が直面するPE選考の壁
PEファンドの多くは中途採用で即戦力を求めており、「投資経験がない」という点が大きな壁になります。しかし、全くのゼロからでもチャンスがないわけではありません。
選考でよく問われるのは、「過去の職務経験がどのようにPEで活かせるか」「企業価値向上にどんな視点を持っているか」「実際に投資対象を考えてみたことがあるか」といった内容です。これに応えるためには、対策としてPEファンドの投資事例を研究し、自分なりの観点で「この会社に投資したい」と語れるようにしておくことが効果的です。
2. 職種別・出身業界別の選考対策

コンサル・FAS出身者が押さえるべきポイント
戦略コンサルティングやFAS業務では、仮説思考や構造化された課題解決が求められますが、PEファンドではさらに実行力・責任感が求められます。特に選考対策としては、以下のようなポイントを意識しましょう。
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単なる助言者としてではなく「実務実行者」としての視点で語る
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実際にどのような施策が企業価値向上に結びついたかを明確にする
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提案後の結果を数値で説明し、「成果」を打ち出す
また、面接では「バリューアップできるかどうか」に注目されるため、企業の課題を読み取り、対策の仮説を持って話せる準備をしましょう。
投資銀行出身者が注意すべき点
投資銀行出身者は、財務スキルやモデリング能力が非常に高く評価されます。しかし、PEの選考では「数字の裏にある事業の実態」まで見ているかが問われます。対策としては以下の項目が求められます。
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実務経験を「企業価値をどう判断したか」に落とし込んで説明
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企業経営者や買収先とのやり取りの中で、どう関係構築したかを語る
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「この企業に何をしたら価値が上がるか」といった仮説を提示できる準備
数字だけでなく、「事業を見る目」があるかどうかをアピールすることが肝要です。
事業会社の投資部門出身者が強みを活かす方法
事業会社の投資部門出身者は、リアルな業務と経営課題に直面しているため、PE選考でも再現性のあるスキルとして評価される可能性があります。特に以下のような点をアピールすると効果的です。
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投資実行からPMI(統合)まで一貫して関与した経験
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事業再編や新規事業立ち上げのプロジェクトマネジメント
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経営陣とのコミュニケーション能力
選考対策では、戦略レベルの発想と現場感のある実行経験をバランスよく整理して話せるようにしましょう。
3. 事前準備で差がつく応募書類対策
職務経歴書の書き方と注意点
PEファンドは、職務経歴書を通じて「この人がPEで何をできるか」を読み取ります。したがって、形式的な業務説明ではなく、定量成果や工夫したポイントを含めた記述が求められます。
【職務経歴書の基本構成】
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職務要約(Summary)
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職務経歴(業務内容・実績)
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保有スキル
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自己PR
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資格・語学
【良い職務経歴書の特徴】
- 成果が定量的に記載されている
単なる職務の羅列ではなく、「どんな成果をどのように出したか」が具体的な数字や指標で示されていると説得力が増します。たとえば「売上5億円増加に貢献」「コスト15%削減」など。
- 職務の再現性が伝わる
「同様の成果を再現できそうだ」と思わせることが重要です。そのためには、自分の関与した役割や工夫、打ち手を明確に記載し、読んだ人がイメージしやすいようにする必要があります。
- 簡潔かつ論理的に構成されている
長すぎたり抽象的だったりすると読み手の印象は悪くなります。見出し、箇条書き、フォーマットの統一など、整理された構成で一貫性ある書き方がされていることが望ましいです。
- PEファンドが重視するスキルがさりげなく盛り込まれている
分析力、推進力、チームマネジメント、リーダーシップ、泥臭い実行力など、ファンド側が求める資質を経験から自然に読み取れる構成にしておくと効果的です。
- 志望する業界やポジションとの関連性がある
志望先が扱う業界に関する経験や、ポートフォリオ支援に近い実績が記載されていると、「この人はフィットしそうだ」と評価されやすくなります。PE志望なら経営支援、改善プロジェクト、新規事業開発などは強みになります。
職務経歴書対策の基本は、過去の仕事を深掘りし、再構成することです。数値とストーリー性を意識して作成しましょう。PEファンドでは地頭の良さ、過去の成果、そして取り組む姿勢の3点が総合的に評価されます。そのため職務経歴書では、抽象的な表現を避け、行動と結果が結びついた実績を打ち出しましょう。また、他責にしない姿勢や変化を厭わないマインドなども、選考で評価される要素のひとつです。
志望動機の構成と例文
志望動機は、応募者の温度感やリスク許容度を測るために非常に重視されます。単なる意欲や興味の高さを示すだけでなく、「これまでの経験がどのようにPEで活かせるのか」「なぜそのファンドでなければならないのか」を論理的に、かつ納得感を持って伝えることが鍵です。以下の3要素を軸に組み立てると、説得力のある志望動機になります。
【志望動機の構成】
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現職で得た知見・経験
まず、自分がこれまでどのような業務を経験し、何を強みにしてきたかを簡潔に伝えます。成果や具体的な数値があると効果的です。PEファンドが特に注目するのは、「分析力」「案件推進力」「ステークホルダーとの調整力」「経営視点」などです。 -
なぜPEでその経験を活かしたいと思ったか
次に、その経験をなぜPEファンドというフィールドで活かしたいのか、転職動機の核心部分を述べます。ここでは、投資実行にとどまらず、経営支援(ハンズオン)への関与意欲や、価値創出に向き合いたいという姿勢があると、PEファンド側に好印象を与えます。 -
応募先ファンドとの親和性
最後に、「なぜそのファンドなのか」という点を説明します。ファンドの投資スタンス(バイアウト中心、グロース投資あり、特定業界への強み)、バリューアップの方法(経営支援型かどうか)などと自分の志向・経験が合致している点を示すことで、納得感が増します。
この構成に従うと、論理的で納得感のある志望動機になります。
【志望動機の例文】
コンサル出身・20代後半・PE未経験
現職では戦略コンサルタントとして、上場企業やPE傘下企業を対象に、成長戦略立案やコスト削減、PMI支援など、幅広いプロジェクトに従事してまいりました。その中で、施策を提案する立場から、より当事者として企業価値向上にコミットしたいという思いが強くなり、PEファンドへの転職を志望しております。
特に、PEの仕事は単に企業を「買う・売る」だけでなく、経営課題の解決や中長期的な企業価値向上に深く関与できる点に大きな魅力を感じています。コンサルで培った仮説思考力、財務分析力、経営陣とのコミュニケーション力は、バリューアップの場面でも十分活かせると考えております。
貴ファンドは、ハンズオン支援を重視しながらも、経営者と信頼関係を築くことで中長期的な変革を推進されている点に強く共感しました。自ら現場に入り込んで変化を起こしていくような役割に、全力で挑戦したいと考えております。
投資銀行出身・30代前半・マネジメント経験あり
投資銀行ではこれまで約8年間、M&Aアドバイザリー業務を中心に、多様な業種・規模の企業の戦略的取引を支援してまいりました。直近ではVPとしてチームをマネジメントしつつ、案件のソーシングからクロージング、PMI支援に至るまで一気通貫で関与する機会も増え、クライアント企業の成長により深く携わることのやりがいを強く感じるようになりました。
その中で、「アドバイザー」という立場にとどまらず、自らリスクを取り、経営者と伴走しながら企業価値の向上を実現していく「事業の当事者」としてのキャリアを築きたいと考えるようになり、PEファンドへのキャリアチェンジを志望するに至りました。
これまでのキャリアを通じて培った、財務・法務・ビジネスの三位一体での案件推進力や、ステークホルダーとの高度な調整能力は、投資先企業との信頼関係構築やバリューアップの現場でも十分に活かせると考えております。
特に貴ファンドの、経営者支援に重きを置いた投資姿勢や、業界再編・事業承継といった社会的意義の大きいテーマに取り組まれている点に強く共感しております。ハンズオンでの経営支援を通じて、社会に資する価値創出に貢献したいと考えております。
4. 面接対策とよくある質問
PEファンドの面接の特徴と頻出質問
PEファンドの面接では、ファクトベースで話す力、ロジカルシンキング、業界に対する理解度が問われます。特に面接対策としては、以下の質問に備えておくと安心です。
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「最近注目している業界と、その理由は?」
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「企業価値を評価する上で、最も重視する指標は?」
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「仮に1億円あったら、どんな会社に投資する?」
回答には、数字や具体例を交えて「思考の筋道」を示すことが必要です。
英語の面接対策と準備方法
外資系PEファンドの選考過程では、英語による面接が実施されます。こうした面接に向けた対策では、特に自己紹介と職務経歴・過去の案件紹介の準備が重要です。自己紹介については、30秒/1分/2分の3つのバージョンを用意しておくと、インタビュアーの求める情報量や場の空気感に柔軟に対応できるため有効です。また、案件紹介においては単なる案件の概要にとどまらず、自分の果たした具体的な役割、成果、苦労した点、そしてそこから得た示唆や学びまでを含めてストーリー立てて語ることが求められます。英語が苦手な方でも、ただ文章を暗記して機械的に話すのではなく、自分の言葉で自然に話せるようにすることが非常に重要であり、面接官への説得力や印象に大きく影響します。
さらに、実際の面接を想定した練習も不可欠です。可能であれば、英語面接に対応したビジネス英会話スクールやコーチングサービスを利用し、実践的なアウトプットの機会を増やしておくことをおすすめします。特にPE業界特有の用語や表現、ファイナンス用語に慣れておくことが、相手の質問意図を正確に理解し、自分の考えをスムーズに伝える上で大きな助けになります。英語力が選考突破のカギとなるケースもあるため、早めの対策が功を奏します。
逆質問の例と評価される質問のコツ
逆質問は、ファンドへの理解度と志望度を示す最後のチャンスです。一方で候補者の理解度や思考の深さを測る重要な場面とも言えます。評価される質問には、自分の経験と結びついた具体性や現場業務への理解、主体性がある点が特徴です。例えば、投資後の支援で重視していることや、投資判断で財務以外に重視する点、などに関連する質問が好印象です。一方で、調べれば分かる情報や待遇面の質問は避けましょう。現場目線と成長意欲が伝わる質問がポイントとなります。
【逆質問の例】
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「ファンドとして大切にしている価値観は何ですか?」
→ ファンドの投資哲学や行動指針に対する理解・共感を重視している姿勢が伝わる。カルチャーフィットを意識している点が評価されやすい。 -
「経営人材の選定・派遣にはどう関与していますか?」
→ 投資実行後の支援フェーズへの関心が高く、PE業務を広く理解しようとしている姿勢が見える。バリューアップや経営支援への意欲が評価されやすい。
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「貴ファンド内で、投資実行だけでなくハンズオン支援やIR業務に関わる機会を広げていくことは可能でしょうか?また、それぞれに求められるスキルに違いがあれば教えてください」
→ 「どう成長したいか」を描けている人物として評価されやすい。 - 「案件検討や投資先支援のフェーズで、チーム内での役割分担や連携の進め方に特徴があれば教えていただけますか?」
- 「今後のファンド運営において、特に注力されたい業種・投資テーマがあれば、その背景や狙いについてもお伺いしたいです」
表面的な質問ではなく、「応募前にしっかり調べた上での質問」であることが伝わるような対策が必要です。
5. 未経験からPE転職を成功させるための戦略
未経験からのPE転職については以下の記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。
未経験からPEファンド転職は可能?必要なスキル・年収・キャリアを解説
未経験でも目指せる条件とは
PEファンドへの未経験転職では、ポテンシャルと姿勢が重視されます。選考対策として、以下の点を押さえておきましょう。
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投資への強い関心と自主的な勉強
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職歴を通じて得た「仮想PE経験」的な実績(例:企業再編に関与)
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実際の案件に近い思考プロセスを語れる力
また、若手の未経験者であれば、「育成枠」での採用チャンスもあります。
転職前に身につけておくべきスキル
選考で差がつくスキルとして、以下が挙げられます。
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財務モデリング(特にLBOモデル)
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業界リサーチ力
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経営陣との折衝力
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資料作成力(投資委員会資料レベル)
これらは、転職後にも直結するスキルであり、今からでも十分に対策可能です。
情報収集とネットワーキングの重要性
PE業界はクローズドな世界であり、求人情報が表に出にくい傾向があります。したがって、早期から信頼できるエージェントや、業界関係者とのコネクションを築いておくことが、選考突破の鍵となります。
6. まとめ
PEファンドへの転職は、選考難易度が非常に高く、求められるスキルや経験のハードルも決して低くはありません。しかしその分、得られるキャリアの成長機会やリターンも極めて大きく、まさにハイリスク・ハイリターンな挑戦といえるでしょう。だからこそ、入念な選考対策が成功の鍵を握ります。全体の選考プロセスを正しく理解した上で、自身の職歴やスキルに即した対策を講じ、志望動機や職務経歴書、面接準備まで抜かりなく進めていくことが重要です。
特に未経験からPEファンドを目指す場合、何となくの準備では通用しませんが、正しい方向性で戦略的に対策を重ねれば、十分に道は開けます。情報収集を徹底し、自分の強みを明確化しながら、具体的かつ実践的な準備を重ねていきましょう。選考の過程そのものが、自分のキャリアを見つめ直す良い機会にもなります。
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選考プロセスを理解し、実技・面接に向けた準備を重ねることが重要
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職務経歴書や志望動機は「成果」と「再現性」を重視して作成
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未経験でも、投資や経営支援への理解を深め、自分の言葉で語る姿勢が評価される
また、実際に転職活動を始める際には、PE業界に強い転職エージェントのサポートを活用することで、選考対策や求人情報の精度が格段に高まります。ぜひ、本記事を参考にしながら、目指すファンドに合った自分だけのストーリーを磨き上げ、次のキャリアに向けた準備を始めてみてください。