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ArchesトレンドコラムVol.6 「宇宙で行う」太陽光発電

その他

サマリー

  • 従来の太陽光発電の抱える課題を解決するシステムとして、宇宙に巨大ソーラーパネルを搭載した衛星を設置することで太陽エネルギーを採取し、地球に送り返す宇宙太陽光発電システム(SSPS)が、近年急速に注目を浴びている。
  • 産学連携のSEIは地球高周回軌道上に太陽エネルギーを回収して地球に送り返す超大型衛星群を配置する計画を立てており、2050年には全人類が使用すると予測される量の100倍以上のエネルギーが年間供給され得るとの意見もある。

詳細

現在行われる太陽光発電は、大気による光の散乱や天候による影響など、解決困難な課題をたくさん抱える。一方で、宇宙に巨大ソーラーパネルを搭載した衛星を設置することで太陽エネルギーを採取し、地球に送り返す宇宙太陽光発電システム(SSPS)が、近年の技術発達による実現可能性の高まりと共に急速に注目を浴びているのだ。

宇宙太陽光発電システム(SSPS)は、宇宙で太陽エネルギーを収穫してそれを地球の送電網に供給することで地上の再生可能エネルギーの断続性を克服するシステムであり、その概念は数十年前から既に検討されてきた。というのも、1960年代以降の通信衛星は、すべてソーラーパネルで発電し、その電力をマイクロ波信号に変換して地球に送信するという構造なのだ。衛星の大規模化と宇宙太陽光発電はそれ以来提唱はされてきたものの、コスト面で実現不可能とされた。近年になり、「再利用可能なロケット」の出現で打ち上げコストが90%減少したこと、太陽光発電衛星の設計が大幅に進歩しモジュール化され製造コストが削減されたことで、実現可能性が格段と増えたのである。

産学連携のSpace Energy Initiative(SEI) はプロジェクト「カシオペア」で地球高周回軌道上に太陽エネルギーを回収して地球に送り返す超大型衛星群を配置する計画を立てている。

これらの衛星は、地上の工場で生産された数十万個の小型モジュールで構成されており、宇宙で自律型ロボットによって組み立てられ、サービスやメンテナンスもロボットが行う。衛星が集めた太陽エネルギーは高周波の電波に変換され、地上で電気に変換される。衛星1基あたり約2GWの電力を送電することができ、原子力発電所に匹敵する出力となるとされる。

「軌道上には太陽光発電衛星を設置する十分な空間があり、太陽からのエネルギー供給は膨大だ。2050年に全人類が使用すると予測される量の100倍以上のエネルギーが年間供給され得る」とSEI議長を務めるソルタウ氏は言う。

今年初め、コンサルタント会社Frazer-Nashが行ったエンジニアリング調査で、この技術の実現可能が結論づけられたことで、英国政府は宇宙太陽光発電(SBSP)プロジェクトに300万ポンドもの資金提供を発表した。

SSPSには再生可能エネルギーとしての特徴のみならず、無線エネルギー伝送を用いているため宇宙からの送電先の切り替えが可能であること、天候や昼夜の影響による発電変動が小さいこと、大気がないため地上で行う太陽光発電より遥かに効率的であること、等の利点が存在する。 一方、宇宙空間への大量輸送技術や長期運用・維持技術については長期に渡る研究開発を継続していく必要がある。
その間に、地上では既存の再生可能エネルギー技術のさらなる進歩や、それらの発電変動を緩和するための蓄電等の技術進歩や社会実装にも注力することが大切であると思われる。

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