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ArchesトレンドコラムVol.8 ジェネレーティブAIに対するインドの姿勢とは

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サマリー

  • 広大な土地と人口、多様な経済を併せ持つインドでは、AIを活用した急速な経済成長が非常に期待される。
  • インドの雇用状況として、今後3年から5年の間に約5、6万人の従業員の仕事が影響を受けることになると推測されるが、想定される「影響」とは、必ずしも雇用削減でない。
  • インドではAIが持つ可能性を引き出すことを主眼に、明確な国家ビジョンを確立させ、労働力の準備とAI導入のための政策環境の提供を促進して行くことが目指される。

詳細

広大な土地と人口、多様な経済を併せ持つインドでは、AIを活用した急速な経済成長が非常に期待される。ジェネレーティブAIがインドにもたらす影響と、インド政府の対応にはどのようなものがあるのか。

インドのAIスタートアップ企業は2011年以降高い成長を遂げており、うち約9割の企業がAI関連技術への投資を計画している。Stanford AI Index Report によると、2022年のAI投資額でインドは世界第5位となり、過去10年間で総額77.3億米ドル、2022年にはその約40%の額が投資された。

一方で、未だ発展途上にあり人口増加が顕著に見られる中、インドの雇用状況はどのような影響を受けるのか。現状インドのハイテク・サービス業界は2,450億ドル規模で、営業およびサポート部門で約300,000人が働く。このうち、今後3年から5年の間に約5、6万人の従業員の仕事が影響を受けることになると推測される。ここで想定される「影響」とは、必ずしも雇用削減でない。AIを活用したテクノロジーとの協働や、迅速なエンジニア、システムコンサルタントの必要性が大きく増すと見られている。また、外部採用、オンボーディング採用の一部は、AIが生成するプロフィールスクリーニング、候補者推薦、パーソナライズされたオンボーディングによって変革され、大きく採用プロセスが効率化される可能性があるとの見解もある。新技術による雇用創出や採用の効率化で、恩恵を被るケースも多いかもしれない。

さらに、インド政府は国内AIシステムの育成に全力を注ぐ。監視や規制強化を主張する国々とは異なり、政府はインド市場におけるAIの成長に規制を課さないという方針を打ち出したのだ。電子・IT省はAIセクターの堅調な育成のためには、必要な政策とインフラ対策を実施すると同時に、その成長の規制は控えるというコミットメントを表明した。

インド政府によるこのような措置に後押しされ、企業が動画を大規模に再利用できる技術を提供するGan、独自のデータでChatGPTの構築を支援するTrueFoundry、SNS上でAIを活用したカスタマーサポートを促進するCubeなどのスタートアップ企業が次々と出現している。
また、インド政府は2022年7月に開始されたDigital India Bhashiniを含むチャットボットシステムへのChatGPTの統合を積極的に検討している。Digital India Bhashiniは、インドの様々な言語でインターネットアクセスやデジタルサービスを提供することを目的としており、ヒンディー語やその他の現地語にしか堪能でない個人が、それぞれの言語で情報を検索できるようにすることで、デジタル・インクルーシブの達成を目指しているのである。

ジェネレーティブAIはインドにおいて6210億米ドルの生産能力を解放する可能性があり、これは2021年のGDPの5分の1近くに相当するとされる。インドではジェネレーティブAIが生み出す新たなリスクに対処するだけでなく、その可能性を引き出すことを主眼に、AIに対する明確な国家ビジョンを確立させ、労働力の準備とAI導入のための政策環境の提供を促進して行くことが目指される。

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