シンガポール|就労ビザ完全ガイド【2026年9月版】EP・S Pass・上位パスの違いと最新基準を解説

シンガポールへの転職を考え始めたとき、多くの方が最初に直面するのが「就労ビザ」についてです。日本と違い、シンガポールでは外国人(シンガポール国籍/永住権保持以外)が就労ビザなしに働くことはできません。しかも近年、最低給与基準の引き上げや「COMPASS制度」の導入など、ビザ取得基準の厳格化が進んでいます。


「自分の学歴・年齢・年収でビザは取れるのか」
「金融業界だと基準が違うと聞いたが本当か」
「家族を連れていくにはどうすればいいのか」
──こうした疑問は、転職活動の初期段階でクリアにしておくべき論点です。


本記事では、シンガポールの就労ビザの種類と最新のビザ基準、2027年1月に控える基準引き上げ、申請の流れや落ちやすいポイントまで、実務的な視点から網羅的に解説します。


シンガポールの就労ビザの全体像

シンガポールの就労パスは、人材開発省(MOM)が管轄しており、職種や給与水準に応じて複数の種類に分かれています。日本人のビジネスパーソンが主に関係するのは以下の4つです。

パスの種類 対象者 最低給与(月額) 転職時のビザ再申請
Employment Pass(EP) 専門職、管理職、経営層人材 5,600SGD
(金融は6,200SGD)
必要
S Pass 中技能熟練労働者 3,300SGD
(金融は3,800SGD)
必要
Personalised Employment Pass(PEP) 年収の高い役員・エキスパート層 固定給22,500SGD 不要
ONE Pass 超高度人材・著名人 30,000SGD
または卓越した実績
不要

日本からシンガポールのコンサルティングファーム、金融機関、事業会社の専門職・管理職として転職する場合、基本的にはEmployment Pass(EP)の取得を検討いただくケースが多いです。まずはEPを中心に理解を深めていきましょう。


Employment Pass(EP)とは?──プロフェッショナルの標準ビザ

EPは、シンガポールで働く外国人の専門職・管理職向けの就労ビザで、最も標準的なホワイトカラー向けパスです。2段階の審査基準があり、①最低給与基準(EP Qualifying Salary)を満たした上で、②ポイント制度「COMPASS」で40点以上を獲得する必要があります。

現在の最低給与基準(2026年9月時点)

  • 一般セクター:月給5,600SGD以上(年齢とともに段階的に上昇し、45歳以上では10,700SGD)
  • 金融サービスセクター:月給6,200SGD以上(45歳以上では11,800SGD)

注意したいのは、金融業界は基準が一段高いという点です。シンガポールの金融センターとしての地位を背景に、ファンド・証券・銀行系のポジションではより高い給与水準が求められます。また、年齢が上がるほど要求給与も上がる仕組みのため、30代後半〜40代での転職では、提示年収が基準を下回らないか事前の確認が不可欠です。


なお、EPは「雇用主に紐付く」ビザです。内定を得た企業が申請主体となり、転職のたびに新しい雇用主による再申請が必要になる点は、日本の感覚との大きな違いと言えるでしょう。


ポイント制度「COMPASS」の仕組み

2023年9月に導入されたCOMPASS(Complementarity Assessment Framework)は、候補者個人の属性と雇用企業の属性の双方を点数化する評価制度です。各評価項目で基準に応じて10点、20点が加点され、合計40点以上で基準を満たすことになります。

評価項目(基礎項目)

  • C1 給与水準:
    同業界・同年齢のローカルPMET(Professionals, Managers, Executives and Technicians:専門職・管理職・エグゼクティブ・技術職)と比較した給与の相対水準(上位10%以内で20点)
  • C2 学歴:
    認定大学・学位の有無
  • C3 多様性:
    企業内の国籍バランス
  • C4 ローカル雇用支援:
    企業内PMETのうち、シンガポール人または永住資格保持者 (PR) が占める割合

ボーナス項目

  • C5 スキルボーナス:
    人材不足職種リスト(Shortage Occupation List)に該当する場合の加点
  • C6 戦略的経済優先(SEP)ボーナス:
    政府の戦略プログラム参加企業への加点

ここでハイクラス人材に関係が深いのがC1とC5です。外資コンサル・金融機関での専門職採用であれば、給与水準がローカルのPMETの上位に入るケースが多く、C1で高得点を取りやすい構造になっています。

※企業の属性を評価するC3およびC4についてですが、採用企業のPMETの従業員数が25人未満の場合、両項目でそれぞれ自動的に10点(デフォルト点)が付与される仕組みとなっています。


【重要】2027年1月からの最低給与基準の引き上げ

シンガポール政府は2026年度予算案において、EPの発給基準のさらなる引き上げを発表しています。

  • 2027年1月以降の新規申請:一般 5,600SGD→6,000SGD / 金融 6,200SGD→6,600SGD
  • 2028年1月1日以降に満了するビザの更新時にも新基準が適用

つまり、2026年内に転職を完了するか、2027年以降にずれ込むかで、要求される給与水準が変わってきます。「今の提示年収では基準をクリアしているが、更新時に下回る可能性がある」というケースも想定されるため、オファーを受けた際は入社タイミングと更新時の基準の両方を確認しておくと安心です。


S Pass──中技能職向けビザの位置づけ

S Passは中技能職向けの就労パスで、最低給与は一般セクターで月給3,300SGD、金融セクターで3,800SGDからとEPより低めに設定されています。

ただし、S Passには企業側の負担としてQuota(外国人雇用枠)とLevy(人頭税)があります。企業が雇用できるS Pass保持者の数は、シンガポール人の雇用数に応じて制限される仕組みです。このため、給与基準だけを満たしていても、企業側に枠がなければ採用できないという構造上の制約があります。


専門職・管理職での転職を目指す場合はEPが前提となりますが、給与のレンジやポジションによってはS Passの提示もあり得ます。どちらのビザでの採用なのかは、オファー段階で必ず確認しましょう。


ハイクラス人材向けの上位パス(PEP・ONE Pass・Tech.Pass)

給与水準が高いエグゼクティブ層には、雇用主に縛られない上位パスという選択肢があります。

Personalised Employment Pass(PEP)

固定月給22,500SGD以上が申請基準。雇用主に紐付かず、転職の自由度が高いのが最大の特徴です。ただし更新はできず、有効期間は3年間になります。


ONE Pass(Overseas Networks & Expertise Pass)

月給30,000SGD以上、またはスポーツ・芸術・学術分野での卓越した実績を持つ人材向けの最上位パス。2023年1月に新設され、配偶者の就労も優遇されます。


Tech.Pass

テック分野の起業家・上級専門家向けの制度ですが、2027年1月には「ONE Pass AI and Tech track」への統合・置き換えが公表されており、今後は枠組みが変わる見通しです。


ヘッジファンド・PE・コンサルのシニア層であれば、これら上位パスの対象になるケースも珍しくありません。提示報酬の水準によっては、EPよりもキャリアの自由度が高いパスを選べる可能性があります。


家族を連れていくには?──Dependant's Pass(DP)

EP保持者が家族を帯同させる場合、配偶者と21歳未満の子どもはDependant's Pass(DP)を申請できます。申請にはビザ保持者本人の固定月給が6,000SGD以上であることが条件です。

注意点として、DP保持者がシンガポールで働くには、2021年5月以降、別途就労ビザ(EP・S Pass・Work Permitなど)の取得が必要になりました。かつての「LOC(Letter of Consent)で就労可能」という運用は原則終了しているため、共働きを前提にするご家庭は、配偶者側の就労ビザ戦略も含めて計画を立てる必要があります。


ビザ申請の流れと審査期間

実際の申請は雇用主が行うため、求職者側の作業は限定的です。一般的な流れは以下の通りです。

  • 内定・オファー承諾(この時点で提示給与がEP基準を満たすか確認)
  • 企業がEPをオンライン申請(学歴証明・職歴証明・パスポートコピー等を提出)
  • 審査(通常10営業日。追加書類の求めがあると延びることも)
  • IPA(In-Principle Approval:仮許可)レター発行
  • 入国・指紋登録・パス発行

なお近年、学歴申告にはMOM認定の検証会社によるバックグラウンドチェックが必須となっており、大学の卒業証明書や在籍証明の英語版を早めに準備しておくとスムーズです。


EP申請で不許可になりやすいケース

内定が出ても、ビザが下りなければ転職は成立しません。実務上、不許可・審査長期化につながりやすいのは以下のパターンです。

  • 給与が年齢に見合わない
  • 日系企業で日本人比率が高い
  • 職務内容と学歴・職歴の一貫性が薄い
  • 企業側のローカル雇用実績が弱い

つまり、EPの可否は「個人の条件」だけでなく「採用企業の組織構成」にも左右されます。面接前にその企業のビザサポート実績や社内の国籍構成を把握しておくことが、転職成功の確度を上げます。


まとめ

シンガポールの就労ビザは、最低給与基準とCOMPASSの二重構造で審査される、年々厳格化が進む制度です。2027年1月にはさらなる基準引き上げが控えており、「いつ」「どのパスで」「どの企業に」転職するかが、ビザ取得の可否に直結する時代になっています。

一方で、外資コンサル・金融・事業会社の専門職であれば、給与水準の面で基準をクリアしやすいポジションも多く存在します。重要なのは、制度の最新情報を踏まえた上で、自分の経歴と年収レンジに合った求人に的を絞って動くことです。


シンガポール転職を検討されている方は、まず現状の経歴でEP基準をクリアできるのか、どのパスが最適なのか──専門のキャリアコンサルタントにご相談いただくことをおすすめします。日本・香港・シンガポールの3拠点でハイクラス人材の転職を支援する弊社では、現地の最新のビザ動向と採用企業の内情を踏まえた無料キャリア相談を随時受け付けております。まずはお気軽にお問い合わせください。


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