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ArchesトレンドコラムVol.3 メタバースがもたらすアジア圏の教育改革

その他

サマリー

  • デロイトによると、2035年のアジア圏におけるメタバース市場規模は8000億~1兆4000億ドルに達する可能性があるとされている。
  • VRは、さまざまな学習成果を改善するという研究結果が出ており、日本のN高等学校・S高等学校では2021年4月より6,000人以上の生徒がMeta Quest 2ヘッドセットを使ってVRで学習を進めている。
  • メタバースが将来的に教育に与える影響は大きい。学校側は時間や地理的な制約から解放され様々な教育機関の協力・連携が実現され得る。学生側は、地元ではアクセスできない人や機関から直接学ぶ機会を得られるのだ。

詳細

昨年11月、デロイトはメタバースへの投資が今後も継続する場合、2035年のアジア圏におけるメタバース市場規模は8000億~1兆4000億ドルに達する可能性があるとした。今週はメタバースの急発展が期待されるアジア圏での、特に教育分野へのメタバース技術の導入に着目する。

アジア地域は若年層に人口重心がある。積極的なメタバース利用が期待される世界中の若年層(15歳〜24歳)のうち、実にその60%がこのアジア圏に暮らしており、ゲームを楽しむ人口は約13億人と推定される。このことに加え、アジア地域にはテクノロジーの土壌も整備されている。中国や韓国は5G展開の先進国である上、「メタバース」の認識率は世界平均を上回る数値が得られているため、アジア圏は今後のメタバース市場の中心地となるポテンシャルが見出されているのだ。

そのアジア圏、とりわけ日本、韓国、台湾で現在進んでいるのが、メタバース技術導入による教育分野での改革である。

コロナ禍で普及した2Dのオンライン学習には、先生やクラスメートとの交流において、臨場感の欠陥に基づく生徒の注意力やモチベーションの低下という点でやはり限界があった。一方で、この臨場感こそがメタバースの特徴であり、VRは理解力、知識の定着、生徒のエンゲージメント、注意力、モチベーションなど、さまざまな学習成果を改善するという研究結果が出ている。

また、現実世界であれば教育機関が決して提供できないような設備・物資をメタバースでは好きなだけ使用できる。例えば医学生は、実際の患者や自分自身を危険にさらすことなく、複雑な技術を要する手術の練習を何度でも行える。

メタバースの教育分野への導入は決して希望的観測ではなく、現実化している。日本最大のオンライン高校であるN高等学校・S高等学校では、2021年4月より6,000人以上の生徒がMeta Quest 2ヘッドセットを使ってVRで学習を進めているのだ。VR学習教材では、ヘッドセットを被るとVR空間に用意した教室にワープし、クラスメイトと一緒に授業を受けているかのような感覚を味わえる。物理的に離れていても社会性を養うことができ、学習効果を高めることができるとの教員からの報告もある。

具体的には、英語の授業では目の前の人に実践的に道案内をする設定を作り上げたり、数学の授業では模型や図形を手に取ることができるため、平面の図解に比べ理解が深まる。VR学習では、360度の視覚と聴覚を持って実際に体を使って体感することで、集中的・積極的に深い学びを得ることが可能になる。

メタバースが将来的に教育に与えるメリットは非常に多い。
学校側は時間や地理的な制約から解放されることで、様々な教育機関の協力・連携が実現され得る。優秀な教師は、一つの学校のみならず、遠く離れた学校でライブ授業を行うことができる。特定の科目の教師が不足している学校では、全国・世界中から教師を募集して授業を行うことができる。

学生側のメリットとしては、地元ではアクセスできない人や機関から直接学ぶ機会を得られる。意欲的な学生にとっては、海外の教授が指導する国外のセミナーに臨場感持って参加することも可能になる。また、メリーランド大学グローバルキャンパスはVRでクラスメートと会う学生を調査したところ、広場恐怖症やPTSDの学生は対面での対話は難しい一方、仮想教室では快適に過ごせたという調査結果を出した。

メタバースは、このようにアジア圏を筆頭に教育に変革を与えつつある。今後その可能性を実現するためには、教育関係者や政策立案者が、メタバースがもたらす機会を十分に考慮し、利用していく必要性があるのだ。

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