【データセンター市場最新動向】なぜマレーシアがデータセンター hubに?徹底分析 – 成功要因と課題

はじめに – なぜマレーシアにデータセンターが作られているのか?
近年マレーシアはアジアにおけるデータセンターの重要な拠点として急速に成長している。その背景には、地理的な利点、政府の積極的な支援、安定したインフラ、そして高い通信速度がある。特に、デジタルトランスフォーメーションの進展に伴い、企業がデータ管理やクラウドサービスを必要とするようになり、マレーシアのデータセンター市場は急速に拡大している。シンガポールや香港などの他の主要市場に比べ、コスト効率が良いことも魅力のひとつだ。
データセンターへの対内直接投資も増加しており、大型のデータセンターへの投資活発化している。マレーシア投資貿易産業省(MITI)によれば、2021~2023年に認可されたデジタル投資のうち、データセンターが79.3%を占めており、額にすると約95億リンギット(約3,200億円)となっている。今回は、急速に成長するマレーシアのデータセンター市場とその成功要因・課題について解説する。
マレーシアのデータセンター市場について
マレーシアのデータセンター市場は急成長しており、同国のデータセンター市場は2022年から72%急増し、2024年には約22億ドルに及ぶと推計されている。また、2030年には東南アジア全体の成長率47%を上回り、約60億ドルに達する見込みである。特にクラウドサービスやデータ分析の需要増加が市場拡大の大きな要因となっており、データセンターは企業が扱うデータ量の急増に対応するために不可欠なインフラとして、ますます重要な役割を果たすようになっている。

マレーシアのデータセンター市場においては、国内外の大手プレイヤーが積極的に進出しており、特にクアラルンプール(KL)とペタリンジャヤはデータセンターの集積地として注目されている。国内では、AWS、Google Cloud、Microsoft Azureなどが展開し、アジア全域へのアクセスを強化している。
マレーシアのデータセンター市場の動向
現在、マレーシアのデータセンター市場ではいくつかの主要な動向が見られる。第一に、クラウドコンピューティングの需要が急激に増加している点だ。企業はますますクラウドを活用し、オンプレミスの設備からクラウドへの移行を進めている。これにより、データセンターの需要が増加しており、AWSやGoogle Cloud、Microsoft Azureなどの大手が市場シェアを拡大している。
さらに、5G通信の導入が進んでおり、それに伴いエッジコンピューティングの需要も高まっている。データセンターは、ユーザーの近くでリアルタイムでデータを処理するための拠点として重要な役割を果たすようになり、これが今後の市場成長を支える要因となる。 また、IoT(モノのインターネット)の普及が進み、これによって生成される膨大なデータを処理するためにデータセンターがますます重要視されている。これにより、マレーシアのデータセンターは地域内での重要なデータハブとしての役割を強化していくと予想される。
マレーシアのデータセンター成功要因
以上のように、マレーシアはアジアにおけるデータセンター市場の重要なハブとして急速に成長している。この成功にはいくつかの要因があり、特に政府の支援、地理的優位性、安定した電力供給、コストの競争力、そしてグリーンテクノロジーの導入が挙げられる。以下に、これらの要因がどのようにマレーシアのデータセンター市場の成功に寄与しているかを説明する。
1. 政府の支援
マレーシア政府は、データセンター市場の成長を促進するために多くの支援を行っている。特に「デジタルマレーシア」や「マレーシア・デジタル・エコノミー・ブループリント(MyDIGITAL)」といった政策が、デジタルインフラの整備を支援している。
これにより、データセンター事業者には税制優遇措置やインセンティブが提供され、国内外の企業が積極的に投資を行っている。 例えば、マレーシア政府はデータセンターの設置に関連する税金を軽減する措置を取り、企業の初期投資負担を軽減している。また、政府は「東南アジアのデータセンターのハブ」としての地位を強化するため、インフラ整備や規制緩和を進めており、これによりマレーシアは外国企業のデータセンター投資を呼び込むことに成功している。
2. 地理的優位性
マレーシアの地理的な位置は、データセンター運営において重要な利点を提供している。マレーシアは東南アジアの中心に位置し、アジア全域、特に中国、インド、オーストラリアなどへのアクセスが迅速である。この地理的な優位性は、データセンターが地域全体のデータトラフィックを効率的に処理するための拠点として機能することを可能にしている。
また、マレーシアは地震や自然災害のリスクが比較的低いため、データセンターの設置にとって安定した地理的条件を提供している。これにより、企業は安全で信頼性の高いインフラを提供することができ、アジア全域のデータトラフィックを処理するための重要な拠点となっている。
3. 安定した電力供給
データセンターにおいて最も重要な要素の一つが電力供給の安定性である。マレーシアは、安定した電力供給と供給の冗長性を提供しているため、データセンター運営者にとって非常に魅力的な市場となっている。
特に、マレーシアの電力供給は、政府のインフラ整備により、高い信頼性を誇り、電力の需要に対する対応能力が高いとされている。 さらに、マレーシアは多様なエネルギー源を活用しており、電力供給の安定性が確保されている。これにより、データセンターは24時間365日稼働し続けるためのインフラが整っており、これがデータセンター業界の成長を後押ししている。
4. コスト
マレーシアは、データセンターを運営するためのコストが比較的低いため、アジアの他のデータセンター拠点と比較して競争力のある価格を提供している。特にシンガポールや香港などの他の主要データセンター拠点と比べて、土地や労働力、電力のコストが低いため、企業にとってコスト効率の良い選択肢となっている。
また、マレーシアの労働市場には技術力の高い人材が多く、データセンターの運営に必要な高度な技術や知識を持ったスタッフを確保しやすい環境も整っている。これにより、データセンター運営のコストが抑えられ、より効率的な運営が可能となっている。
5. グリーン(環境への配慮)
近年、持続可能な運営がますます重要視されている中、マレーシアは「グリーンデータセンター」への転換を進めている。マレーシア政府は再生可能エネルギーの導入を推進しており、企業もエネルギー効率を重視した施設の設計を行うことで、環境負荷を最小限に抑えつつ、効率的にデータセンターを運営することが可能となっている。
例えば、マレーシアには太陽光発電や水力発電など、再生可能エネルギーを活用したデータセンターが増えており、グリーンエネルギーによる運営が進められている。これにより、データセンターはエネルギー効率が高く、環境に配慮した運営が実現され、企業のCSR(企業の社会的責任)活動にも貢献している。
今後の課題
マレーシアのデータセンター市場の成長にはいくつかの課題もある。まず、供給不足が深刻化している。急速に増加する需要に対して、データセンターの新設が追いついていない現状があり、特にクアラルンプール周辺では、土地の確保が難しく、新たなデータセンターを建設するためのスペースが限られている。

次に、サイバーセキュリティの強化が必要である。データの量が増えるとともに、サイバー攻撃やデータ漏洩のリスクも高まるため、これに対応するための高度なセキュリティ対策が求められている。また、データ保護に関する規制が厳しくなる中で、これに適応するための体制整備も急務だ。
今後の展望
マレーシアのデータセンター市場は、今後ますます拡大すると予測されている。特に、AI(人工知能)やビッグデータ分析が進む中で、データセンターの需要は高まり続けるだろう。さらに、5G通信の普及に伴い、エッジコンピューティングの需要が急増することが予想される。これにより、データセンターは単なるデータ保存の場を超えて、リアルタイムでデータを処理するための重要なインフラとなる。
マレーシア政府は引き続き、デジタルインフラの強化を目指し、外国企業を呼び込むための優遇措置を維持するとともに、国内企業にもインセンティブを提供する予定だ。これらの政策がデータセンター市場の成長を後押しし、マレーシアはアジアのデータセンター市場で中心的な役割を果たすことが予想されており、今後も注視していくべきであろう。
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情報参照先:
- EdgeConneX|東南アジアのデータセンター大国、マレーシア|(アクセス日: 2024年12月23日)
- Mordor Intelligence|マレーシアのデータセンター市場| (アクセス日: 2024年12月23日)
- Innovatopia|マレーシアのデータセンター市場の成長要因と今後の展望| (アクセス日: 2024年12月23日)
- JETRO|マレーシアの投資環境|(アクセス日: 2024年12月23日)
- Asia ইনফো নেট|マレーシアのデータセンター市場| (アクセス日: 2024年12月23日)