【海外成功事例】中国車はEVだけではない—Cheryが「Omoda」「Jaecoo」で仕掛けるハイブリッド輸出の実態

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はじめに

CheryのASEAN戦略を読み解く鍵は、「中国車=バッテリーEV(BEV)専業」という先入観を崩す点にある。Cheryは2004年にChery Internationalを設立し、23年連続で中国トップの自動車輸出企業として海外網を拡大してきた。2023年にはOmodaとJaecooを独立ブランドとして打ち出し、都市型・デザイン志向のOmodaと、上級SUV・アウトドア志向のJaecooを、中国国内ではなく海外市場向けに設計したことが特徴である。しかも足元ではBEVだけでなく、内燃機関車(ICE)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、レンジエクステンダーEV(REEV)、ハイブリッド車(HEV)を国別に出し分ける「電動化のフルライン化」が進んでいる。これは、充電網と所得水準が国ごとに異なるASEANでは合理的な輸出設計である。

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ASEANでの実装も明快である。タイではRayong工場を中核に現地で部品を組み立てる方式(CKD)での生産へ移行し、マレーシアではセランゴール州の工業都市(Shah Alam)で中型SUV(Jaecoo J7)の現地組立を開始、ベトナムでは大手コングロマリット(Geleximco)との合弁でThai Binh工場を建設中、インドネシアではPT Chery Sales Indonesia配下でJaecooブランドを展開する。

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販売面でも、タイでは2025年末の新規EV登録で首位、マレーシアでは2025年販売約1.7万台、インドネシアではJ5 EVが2026年初にEV SUV首位、ベトナムでも約35の販売拠点と法人約1000台規模の案件が立ち上がっている。結論から言えば、OmodaとJaecooは「中国BEVの追加ブランド」ではなく、ハイブリッドを軸に関税・制度差を吸収しながらASEANへ浸透する輸出プラットフォームとして理解すべきである。

Cheryの海外戦略と組織設計

Cheryの海外戦略は、単なる完成車輸出ではなく、「輸出→販売網→現地組立→部品調達→輸出拠点化」という段階投資モデルである。Chery Internationalの公式年表では、2001年に初輸出、2004年に国際事業を正式設立し、現在は約130の国・地域、海外販売拠点約1800へ展開している。2024年にはChery全体で約1500万台の生産車を達成しており、Omoda/Jaecooはこの既存の輸出母体の上に載る「海外専用の高付加価値ブランド」である。

OmodaとJaecooの設立背景も輸出最適化そのものである。公式説明では、Omodaは若年・都市型・ファッション志向、Jaecooは都市エリート向けの上級SUV・探索志向として分化されている。つまりChery本体が量販ブランド、Omoda/Jaecooが “輸出先での上振れ価格帯” を担う構図である。ASEANではこの構図がさらに制度対応と結びつく。ベトナムではGeleximcoとの合弁で総投資約8億ドル規模の工場を推進し、タイではRayong工場をアジア向け輸出ハブとして整備し、マレーシアではChery Corporate Malaysiaの工場をJaecoo組立に活用している。インドネシアではJaecoo IndonesiaがPT Chery Sales Indonesiaの一部として運営されている。

OmodaとJaecooの商品設計

商品面で最も重要なのは、Omoda/JaecooがASEANで同じ車を売っていないことである。タイはBEV・REEV・チェリー独自のハイブリッドシステム(SHS)が先行し、マレーシアはICEとPHEVを厚く、ベトナムはICEから入りつつSHSを追加し、インドネシアはBEVとSHSを強く押す。すなわち、ブランドは共通でも、パワートレインは制度・税制・インフラに合わせてローカライズされている。

技術的にも、ハイブリッド中核は外部OEM依存ではなく自社開発色が強い。CheryはCSH/SHSとして、約45%熱効率の1.5Tハイブリッド専用エンジン、DHT、専用ハイブリッド電池を自社技術として訴求している。一方で、公開一次情報で電池セル供給先の社名はASEAN向け消費者サイト上で明示されていない。

したがって「電池は外部調達だが、少なくとも公開資料からはサプライヤー特定不可」と書くのが厳密である。ソフト面では、約15インチ級ディスプレー、CarPlay/Android Auto、ヘッドアップディスプレイ(HUD)、N95空調、50W無線充電などを横展開している。安全面ではOmoda C5/E5がオーストラリア・ニュージーランドの新車安全性能評価制度(ANCAP)5つ星、Jaecoo 7 PHEVが欧州の新車安全性能評価制度(Euro NCAP)5つ星である。

ASEAN四カ国での販売実績と制度差

ASEANでの伸び方は国ごとに異なる。マレーシアは販売実績が最も読みやすく、2025年で約1.7万台、累計約2.5万台、販売・サービス網は2025年の50拠点から2026年65拠点へ拡張予定である。タイは台数開示よりも登録順位が前面に出ており、2025年11〜12月の新規EV登録で首位となった。

インドネシアはJ5 EVが2026年1月約1900台、2月約2900台を売りEV SUV首位、さらに価格公表後2カ月未満で約1万件の受注、約7000台を引き渡した。ベトナムは累計販売の定期公表が乏しい一方、約35の販売拠点、J7投入、C5 SHS-Hの法人約1000台規模の案件が見えており、立ち上がり局面と捉えるべきである。


この比較から分かるのは、CheryがASEANを単一市場として見ていない点である。ベトナムでは「ASEAN域内輸入→現地生産」、タイでは「補助金取得→輸出も可能なCKD」、マレーシアでは「CBU不利化→現地組立」、インドネシアでは「EV税優遇→ローカルコンテンツ対応」という順で制度差を吸収している。関税・税制・排ガス規制の差を、ブランドではなくパワートレインと生産形態で最適化しているのである。

ハノイの路上展示が示した現地販促

ハノイでは路上展示などの、Chery流の「公共空間×国家イベント×SNS拡散」型プロモーションが実施されている。Omoda & Jaecoo Vietnamの公式SNSによれば、イベントは2026年7月9日〜12日、ハノイ・Hoàn Kiếm区のĐông Kinh Nghĩa Thục広場で実施され、Geleximcoとともに公安系記念プログラム「Tổ quốc bình yên」へ協賛するかたちで展開された。公式投稿はJ5の受注開始、C5 SHS-Hの訴求、現地来場誘導を同時に行っており、場所の視認性とイベントの公的信用を利用したブランド立ち上げ手法と読める。なお、ブース面積や来場者数など規模の公式開示は確認できなかったため、ここは未確定情報として扱うべきである。

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