【海外市場調査】「MINISO」は”模倣的な雑貨店”から独自IP企業へ転換できるか――中国で始まった事業モデルの再設計と東南アジアへの波及

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はじめに

MINISOをめぐる現在の焦点は、東南アジアの大型店がどれだけ華やかになったかではない。より重要なのは、中国発の低価格雑貨チェーンとして成長した同社が、かつて指摘された「日本風のブランド表現」や既存キャラクターへの依存を乗り越え、自らIPを生み出す企業へ変わろうとしている点である。

過去のMINISOは、無印良品や日本の生活雑貨店を想起させる店舗デザインと、幅広い商品を低価格で回転させる小売モデルによって急速に店舗網を拡大した。その一方で、ブランドの独自性や商品の模倣性をめぐる批判も受けてきた。しかし現在、同社は単に他社IPのライセンス商品を仕入れて販売するだけではなく、自社キャラクターや専属アーティストIPの開発に踏み出している。

本稿で見るべきなのは、MINISOが「IP体験型小売」を派手に演出していることではない。店舗とサプライチェーンを持つ雑貨企業が、外部IPを活用して売場を活性化しながら、独自IPを自社の資産として蓄積しようとしていることである。東南アジアで展開される大型店や展示は、この中国で始まった転換が海外へ持ち出されている事例として位置づけられる。

MINISOの本質的な転換は「販売するIP」から「保有するIP」へ

MINISOの成長を支えてきたのは、低価格の商品を大量かつ多カテゴリーで展開する小売能力だった。キャラクター商品についても、Disney、Sanrio、Universalなど知名度の高い外部IPを取り込むことで、短期間に売場の魅力と集客力を高めることができる。

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しかし、外部IPには構造的な限界がある。商品の企画や販売は自社で行えても、キャラクターそのものの権利や世界観は他社に帰属するため、長期的なブランド資産として蓄積できる範囲が限られる。また、人気IPの獲得競争が激しくなれば、ライセンス料や契約条件が利益を圧迫する可能性もある。

そこで同社が進めているのが、外部IPを使って売上と顧客接点を確保しつつ、自社IPを育てる二層構造である。外部IPは短期的な販売力をもたらす。一方、自社IPは認知や商品実績が蓄積されれば、将来の製品開発、イベント、ライセンス、海外展開に利用できる独自資産になる。MINISOにとっての転換とは、商品にIPを載せることではなく、IPそのものを企業の資産として持つことにある。

YOYOは「次のLabubu」ではなく、MINISOの独自性を測る試金石

自社IP戦略の象徴が、同社のオリジナルキャラクター「YOYO」である。YOYOはブラインドボックス、ぬいぐるみ、展示、海外イベントなどに展開されており、単発の商品企画ではなく、複数カテゴリーへ広げられるIPとして育成されている。

もっとも、YOYOを早い段階から「次のLabubu」と比較するのは適切ではない。POP MARTのLabubuは、キャラクターの造形、物語性、収集性、ファンコミュニティ、希少性が結びついて大きなブランド価値を形成した。対してYOYOについては、IP別の監査済み売上、利益率、地域別のリピート率など、独立した事業成果を判断するための情報がまだ十分に開示されていない。

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YOYOの意味は、現時点で大ヒットIPになったかどうかだけでは測れない。重要なのは、MINISOが自社の調達力と店舗網を使って、ひとつのキャラクターを継続的に商品化し、認知を蓄積し、外部IPなしでも顧客を引きつけられるかである。YOYOは、同社が「ライセンス商品の販売者」から「IPの開発者・保有者」へ移行できるかを検証する試金石なのである。

中国市場が転換の主戦場になる理由

中国は同社の発祥地であり、商品開発、サプライチェーン、店舗運営、消費者データ、人材といった機能が最も集積している。独自IPを育てるには、キャラクターを作るだけでなく、商品化の速度、価格帯の調整、売場での検証、販売データに基づく改良が必要になる。その実験を最も大きな規模で行えるのが中国市場である。

中国では、IPをめぐる競争環境も変化している。従来型の雑貨小売では、商品の豊富さや価格の低さだけで差別化を維持することが難しい。消費者の関心がキャラクター、コレクタブル、限定商品、ファン参加型の企画へ移るなかで、MINISOは自社の小売インフラをIP開発の検証装置として使おうとしている。

この点で、同社はPOP MARTと競争しながらも、同じ会社になろうとしているわけではない。POP MARTが強いIPとコレクタブルトイを中心に専門性を深める企業であるのに対し、MINISOは生活雑貨を含む数千店舗の販売網を持つ。MINISOの課題は、一つのIPで熱狂的なコレクターを獲得することだけではなく、日常的な雑貨の売場に自社IPを組み込み、より広い顧客層との接触を繰り返すことである。

東南アジアでは「中国で検証した転換」を輸出する

東南アジアで進む大型店、IP別の売場、展示やイベントは、MINISOがそこで初めてIP型小売を発明していることを意味しない。むしろ、中国を中心に整備した商品開発とIP運用の仕組みを、海外のモールや都市立地に移植する動きと見るべきである。

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タイ、シンガポール、インドネシアなどでは、外部ライセンスIPが来店のきっかけになり、自社IPの展示や商品が認知を広げる場になる。シンガポールのMINISO FRIENDSやYOYOの海外展示は、その一例である。 ただし、店舗装飾や写真撮影の仕掛け自体は、IPビジネスの本質ではない。それらが意味を持つのは、独自IPの商品を実際に売り、現地顧客の反応を蓄積し、中国で磨いた商品化モデルを他国でも再現できる場合に限られる。

したがって、東南アジアの評価軸も「どれだけ体験型店舗らしく見えるか」から、「自社IPがどれだけ現地で認識され、継続的に購入されるか」へ移す必要がある。外部IPで集客し、自社IPで認知を獲得し、各国の店舗で販売実績を積む。この循環を作れるかが、海外展開の成否を左右する。

独自IP化に伴う三つの経営課題

第一の課題は、IP開発の継続性である。キャラクターを一度発表するだけでは、企業の資産にはならない。商品カテゴリーを広げながら世界観を壊さず、定期的に新商品を投入し、顧客が再び購入する理由を作る必要がある。YOYOが一時的なキャンペーンで終わるのか、長期的なブランドになるのかは、今後の企画と開示で検証される。

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第二の課題は、外部IPとのバランスである。外部IPは売場を短期的に強くするが、依存しすぎればMINISO自身のブランド認知は蓄積しにくい。反対に自社IPへの移行を急ぎすぎれば、既存顧客を呼び込む力が不足する。外部IPを集客装置として使いながら、自社IPの売上構成と認知を段階的に高める設計が必要になる。

第三の課題は、在庫と店舗経済性である。IP商品は新作の鮮度が重要であり、SKUが増えるほど需要予測は難しくなる。出店数や大型店の話題性だけでは、IP戦略が成功したとは判断できない。経営が見るべき指標は、IP別・店舗別の在庫日数、値引き率、欠品率、リピート購入率、既存店売上である。独自IPを増やすことが、在庫負担の増大や値引き販売につながるなら、IP化は小売業の収益構造を改善していない。

おわりに――MINISOは「IPを売る会社」から「IPをつくる小売会社」になれるか

MINISOの現在地を、東南アジアの華やかな旗艦店やIP体験の演出だけで説明するのは不十分である。核心にあるのは、中国を基盤とする雑貨小売企業が、かつての模倣的なイメージを乗り越え、独自IPを開発・商品化・蓄積する会社へ変わろうとしていることだ。

その意味で、MINISOの挑戦は「IPを売る」から「IPをつくり、育て、広げる」への転換である。外部IPで短期的な需要を取り込み、自社IPで長期的な資産を形成し、数千店舗の販売網でその価値を検証する。中国市場はこの転換の主戦場であり、東南アジアはそのモデルが海外でも通用するかを試す市場となる。

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今後注目すべきは、新店数や展示の規模ではない。YOYOを含む自社IPが、外部IPの陰に隠れず、継続的な売上と顧客認知を生み出せるか。そして、MINISOが店舗網を単なる販売チャネルではなく、独自IPを育てる事業基盤へ変えられるかである。そこまで到達して初めて、同社は「雑貨店をIPで装飾した企業」ではなく、「小売を起点にIP企業へ進化した会社」と評価できる。

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この記事を書いた人

Aizawa

記事編集クリエイター

大学時代にアメリカへの留学を経験し、その際に異文化への関心が一層深まりました。
現在も海外のライフスタイルに強い興味を持ち、特に北欧やフランスの生活文化をウォッチしています。
これからも読者の皆様に面白い話題を提供できるよう心がけて参ります!

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