【海外成功事例】アジア市場で強いフィットネスチェーンはどこか? Anytime FitnessとFitness Firstに見る「拡張型モデル」と「選別型モデル」

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はじめに——アジア・東南アジアで拡大するフィットネス市場の現状

アジア市場、特に東南アジアのフィットネス業界は近年著しい成長を遂げている。経済成長と中間層の拡大、健康志向の高まりを背景に、ジムやフィットネスクラブへの需要が急増しているのだ。例えばベトナムでは、近代的なフィットネスクラブ産業が年平均20%近いペースで成長し、2020年時点で市場規模が1億ドル規模に達したとの予測もある。またインドネシアでも、2020年代後半に向け年間10%以上の高成長が見込まれており、2029年までに市場規模が現在の2倍近くになるとの予測が報告されている。こうした数字が示すように、東南アジアのフィットネス市場は非常に大きな伸び代を抱えている。

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しかし、この市場は国や地域ごとに成熟度や顧客の嗜好が異なるのも事実である。従来、欧米や日本に比べフィットネスクラブの普及率が低かった国々では、フィットネスに支出する文化が根付いておらず、ジム会員率が1%未満にとどまっていたケースもある。だが最近では都市部の若年層や中間所得層を中心に「体を鍛えること」「健康的なライフスタイル」が新たなステータスとなりつつあり、フィットネス産業に追い風が吹いている。特に大気汚染や気候の問題から屋外運動が難しい都市では、ジム通いが効率的な運動手段として定着し始めている。このような環境変化に伴い、外資系の大手チェーンも次々と東南アジア市場に参入し、市場競争は年々激化している。

この拡大するアジアのフィットネス市場において、Anytime Fitness(エニタイムフィットネス)Fitness Firstフィットネスファースト)という2つのグローバルチェーンが際立った存在感を示している。それぞれビジネスモデルの異なる両社は、東南アジアを舞台に独自の戦略でシェア拡大を図ってきた。本稿では、Anytime Fitnessが体現する「拡張型モデル」と、Fitness Firstが採用する「選別型モデル」の違いを分析する。

Anytime Fitness:フランチャイズ拡張による圧倒的な店舗網

Anytime Fitness(エニタイムフィットネス)は、24時間営業のコンパクトなジムを特徴とし、フランチャイズモデルによって世界中で急速に店舗数を増やしてきたチェーンである。アジア市場でもその勢いは顕著で、特に東南アジアにおいて非常に強い存在感を放っている。

東南アジア各国への急速な展開

Anytime Fitnessはアジアへの進出以来、短期間で圧倒的な店舗網を築き上げた。2020年に東南アジア地域のマスターフランチャイズ権を取得した後、ネットワークを約70%拡大し、アクティブ会員数も倍増するという驚異的な成長を遂げている。2024年時点で東南アジア全域に420以上の拠点を構え、さらにタイ市場では今後一挙に30店舗を新規オープンする攻勢に出ると発表された。その結果、2025年にはついにアジア合計で500店舗の大台を突破し、地域最大規模のフィットネスネットワークとなった。この店舗数は、同地域における競合他社を大きく引き離す数字である。

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Anytime Fitnessの強みは、東南アジアの主要マーケットをほぼ網羅している点だ。シンガポール、マレーシア、タイ、インドネシア、フィリピン、ベトナム、香港、台湾といった経済成長著しい市場に次々と出店し、各国でフランチャイズ加盟店を通じて地域密着の店舗展開を図っている。フランチャイズ戦略により、各国のパートナー企業や起業家からの投資を呼び込みつつ、自社資本だけでは成し得ないスピードでの多店舗展開を実現した。実際、東南アジア全体で見れば500店舗のうち約4分の3がフランチャイズ運営であり、残りは地域マスター企業による直営店となっている。フランチャイズモデルは現地事情に詳しいパートナーの知見を活かせるため、各国それぞれの市場ニーズに柔軟に対応できたことも成功要因と言える。

マスターフランチャイズによる統括と支援体制

シンガポール拠点のInspire Brands Asia(IBA)は、Anytime Fitnessアジア全域におけるマスターフランチャイジーとして、東南アジア主要国の約500以上の店舗ネットワークを統括している。2019年に各国の有力フランチャイズ企業が共同出資して設立されたIBAは、地域内でのブランド展開を戦略的にコントロールする役割を担っており、各国市場で直営店と加盟店の比率や出店方針を決定し、統一的なマーケティング・研修・運営ガイドラインを提供している。

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