【タイ健康食品市場攻略】スポーツ&美容サプリ成功事例と日系企業の勝ち筋とは?

目次

はじめに——タイにおける健康食品市場の成長性と期待

東南アジアでは人々の健康志向が高まり、「健康食品」や「サプリメント」への需要が年々増加している。中でもタイ 健康食品市場(タイ サプリメント市場)は域内最大級の規模を誇り、今後も高成長が期待されている。実際、タイ健康食品(栄養補助食品)市場規模は2022年時点で約1,900億バーツに達し、2026年には2,390億バーツに拡大する見込みである。

この背景には、高齢化の進展や生活習慣病の増加、新型コロナ下で定着した健康意識の高まりなどがあり、市場はスポーツ系・美容系サプリメントを含めて力強い成長を続けている。こうした市場拡大への期待感から、タイは健康食品 海外市場展開を目指す企業にとって有望なターゲットである。

タイ健康食品市場の規模・トレンド・消費者動向

タイのサプリメント市場は、東南アジア全体でも重要な位置を占めている。東南アジア主要5ヶ国のサプリメント 市場合計に対し、タイは約25%という最大のシェアを持つ。同国市場は年平均5%前後の堅実な成長を続けており、今後も拡大が見込まれる。国内では伝統的にビタミン剤やハーブ由来のサプリ利用が浸透していたが、近年は製品カテゴリが多様化し、参入企業も増加している。

新型コロナを契機に免疫力向上サプリへの関心が急上昇し、パンデミック後もその需要は高水準を維持する一方、社会活動の再開に伴いプロテインなど運動関連ニーズも再び伸びている。また、美容志向や健康寿命への関心の高まりにつれて、ダイエット・生活習慣病予防や美容・アンチエイジングを訴求するサプリメントへの需要も拡大している。

スポーツ系・美容系サプリメントの成功事例

タイの健康食品市場では、国内企業・海外企業を問わず様々なプレイヤーがしのぎを削っている。以下ではスポーツ系・美容系サプリメント分野で顕著な成功を収めている事例を紹介し、その要因を深掘りする。

Blackmoresオーストラリア

Blackmores(ブラックモアズ)は豪州発のビタミンサプリメントブランドで、タイ市場で約30%以上のシェアを持つ圧倒的なトップ企業である。ブラックモアズは、品質・天然由来成分へのこだわりと、医師・薬剤師への積極的な情報提供活動により、医療系チャネルを中心に強固なブランド信頼を築いている。

加えて、ECチャネルでの展開やSNSインフルエンサーとの連携も強化し、若年層へのアプローチにも成功している点が他社との差別化となっている。

NBD Healthcare Co., Ltd.(タイ)

NBD Healthcare社は、タイの著名な健康食品・化粧品OEMメーカーで、2023年に日本のサントリーウェルネス株式会社の傘下となった。自社製造施設を保有し、ビタミンや植物由来成分に特化したサプリメント開発を強みとする。買収後は日本品質の技術と安全基準が導入され、国内外のクライアントからの信頼をさらに獲得している。今後はアジア全域への輸出拡大も視野に入れている。


Vistraブランドを中心に、ミスユニバース代表の起用や「14日間チャレンジ」キャンペーンなどのマーケティングを展開。ワトソンズなどの流通チャネルを押さえ、美容・健康志向の女性層に強く訴求している。パッケージや商品設計のローカライズ、価格戦略、タイ語対応、自然派素材の訴求により、ローカル消費者の信頼を得ている。

Mega Lifesciences Public Company Limited(タイ)

Mega Lifesciences Public Company Limitedは、タイ証券取引所上場のグローバル企業で、健康食品・OTC薬品の製造販売を展開。ASEANおよびアフリカ諸国を中心に30カ国以上で事業展開しており、製品開発からマーケティング、販売チャネル構築までの一貫体制を持つ。現地適応型の製品戦略と価格設計で成功を収めている。

自社ブランド「Mega We Care」は、予防医療志向のビタミンサプリを中心に展開。現地医師・薬剤師との連携、地域に応じたマーケティングや啓発活動を重視し、ローカルニーズに応じた製品(ハラル対応、ハーブ配合、低価格サイズなど)を柔軟に開発。販売網もミャンマーなどでの4万店超カバレッジなど競合優位性がある。

Brand’s(サントリー)

Brand’s(ブランズ)はチキンエキスやツバメの巣を原料とした栄養飲料で、タイでは国民的健康ブランドとされている。サントリー食品インターナショナルが展開し、テレビCM、季節ギフト需要、教育支援を絡めたプロモーション、著名人起用など、長年の積極的なブランディングが奏功している。

「健康は贈り物」という文化的価値観に即したギフト商戦の展開、地元ニーズに合わせた製品(例:Vitaシリーズ)投入、若年層へのアプローチ、コンビニ常設など、販路も極めて広範囲。中高年から学生層まで、幅広い顧客層に浸透している。

Amado(タイ)

Amado(アマド)はタイ発の美容・健康サプリメント企業で、コラーゲン飲料市場においてトップクラスのブランド力を持つ。20〜40代の美容志向の女性層を中心に支持されており、「We Live For Your Health」をブランドメッセージに掲げている。EC戦略では、ShopeeやLazadaを活用したプロモーション販売、LINE公式アカウントやテレビショッピングによるD2C販売など、多チャネル戦略を展開。テレビ通販番組「Amado Shopping」ではデータドリブンな販売分析も行っている。

ブランドポジショニングとしては「サプリメント専門家」としての信頼性を訴求し、日本産高品質コラーゲン原料や無添加設計を強みとした製品群(Colligi、H Collagenなど)を展開。コスト構造の透明性や効果実感の可視化による誠実な販売姿勢が好感され、消費者との信頼関係を築いている。

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上記の4社に共通する成功要因として、以下のような戦略的特徴がある:

  • 品質と信頼性への強い訴求:天然由来成分、高品質な原料調達、GMP準拠など安全性への徹底した取り組みが、医師・薬剤師・専門家との連携とともにブランドの信頼を構築している。
  • マルチチャネル型のEC・D2C戦略:ShopeeやLazada、LINE公式アカウント、テレビショッピングなど多様な販売チャネルを組み合わせ、オンラインとオフラインの両面から顧客接点を拡大。
  • 文化や生活習慣へのローカライズと可視化された機能性訴求:地域ニーズを汲み取った製品設計、タイ語による明快なパッケージ・広告・体験訴求(ビフォーアフター等)により、効果実感を軸とした購入促進が行われている。
  • デジタル時代に即した顧客エンゲージメント:SNSキャンペーン、インフルエンサー活用、LINE登録者特典、データドリブンなテレビ通販分析などを通じ、消費者との継続的な接点とロイヤルティ醸成を図っている。

これらの成功要因は、単に製品スペックや価格の優位性にとどまらず、「生活者の価値観や行動に寄り添い、継続的な関係を築く」ことに焦点を当てた戦略であると言える。

日系企業の参入ポイントとは?

1.法規制・認可プロセスへの対応

タイでサプリメントを販売するには、食品医薬品局(Thai FDA)への製品登録が必須である。健康食品は「食品」として分類されるが、含有成分や効能表示によっては医薬品に該当する可能性もあるため、ラベル表示や成分配合には細心の注意が必要である。また、登録には製品成分の安全性データ、製造工程の詳細、原材料の証明などが求められ、通常申請から許可まで6〜12ヶ月を要する。日本のGMP(適正製造基準)認定は信頼材料となるが、タイ独自の審査基準もあるため、現地法規への理解と専門家との連携が成功の鍵となる。

2.販売チャネルと流通構造

タイでは伝統的なドラッグストア(Boots、Watsons)、コンビニ(7-Eleven)、スーパー、百貨店といった小売チャネルに加え、オンライン販売が急速に拡大している。

特にShopeeやLazadaなどのECプラットフォームでの購買が一般化しており、SNSと連動したマーケティングが有効である。現地パートナーとの提携による店舗展開に加え、ECでの公式ショップ設置、ライブコマース、KOL(Key Opinion Leader)活用など多角的な展開が求められる。

3.現地パートナーとの連携

タイ市場は商慣習や文化が日本と異なるため、信頼できる現地パートナーとの提携は不可欠である。販売代理店、流通業者、製造委託先などの選定は、進出成功の成否を大きく左右する。とくに中長期でブランドを育てるには、ローカル企業との共同開発やジョイントベンチャー形式の活用が有効である。市場知見や行政対応力のあるパートナーとの連携により、柔軟な市場対応が可能となる。

4.言語・文化対応

製品パッケージ、広告、使用説明書すべてにおいてタイ語表記が求められる。現地の文化や宗教観に配慮した表現、カラー設計、パッケージデザインが重要である。加えて、仏教文化の影響が強いタイでは、過剰な効果・効能表現は消費者に不信感を与えることもあるため、エビデンスに基づいた誠実な訴求が望まれる。タイ人消費者との心理的距離を縮めるには、現地インフルエンサーとの連携が非常に有効である。

このように、タイ市場への参入には複数の課題がある一方、日本企業の品質・信頼性といった強みを適切に活かせば、十分な成長余地がある。戦略的な準備と現地理解を前提とした長期的視点が成功のカギを握る。

終わりに

タイの健康食品市場、特にスポーツ系・美容系サプリメント分野は、今後の東南アジア市場の成長を牽引する中心的な領域である。地元および海外企業の成功事例からは、品質訴求・マーケティング手法・チャネル戦略における多様なアプローチが有効であることが示された。

出典:Adobe Stock

日系企業にとっては、「日本ブランドの信頼性」や「研究開発力」という明確な優位性を背景に、適切なローカライズとパートナーシップ戦略を組み合わせることで、十分に競争力を発揮できる環境が整いつつある。タイを足がかりに東南アジア全域への展開も視野に入れた戦略立案は、今まさに取り組むべきテーマである。現地の消費者ニーズや規制環境を深く理解し、長期視点で市場参入を進めることで、日系企業のグローバル展開にとって大きな成果をもたらすだろう。

タイや東南アジアの健康食品市場に関するより具体的な調査や戦略立案をご希望の場合は、ぜひArchesにご相談ください。海外市場調査や事業戦略支援の実績を活かし、貴社のグローバル展開をサポートいたします。

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この記事を書いた人

Kitagawa

記事編集クリエイター

趣味は旅行で、アジアを中心に様々な国を訪れています。
現地の人々の生活や文化に触れることで、新しい視点や気づきを得られるのが楽しみです。
好奇心旺盛な性格を活かして、常に新鮮な目線でお届けできればと思います!

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