【台湾発】都市部の若者に人気! “予定にとらわれない” 即時予約アプリ「FunNow」

目次

はじめに

様々な予約サイトが乱立する昨今、Uberのように需要と供給に基づいた価格で即時予約可能なアプリを立ち上げた「FunNow」が注目を集めている。都市部で過ごす若年層に人気を博すFunNowアプリの魅力と企業の魅力を解説する。

台湾発、即時予約アプリ「FunNow」とは

2014年に台湾にて創業したFunNowは、ホテル、レストラン、スパ、バー、エンターテイメント・イベントなどの様々なサービスを、即座にかつ直前に予約できないという市場の課題を解決することを目的にアプリを提供している。

 「直前の予約」に焦点を当てることで他社との差別化を図り、ユーザーがその場でサービスを見つけ予約できるように設計されているFunNowアプリは、現在250万人以上のユーザーを抱え、香港、シンガポール、日本などアジアを中心に人気を拡大している。

2023年には、タイ・バンコク発祥のレストラン予約アプリ「Eatigo」との合併を通じ、より本格的に東南アジア市場への進出を企図している。また、2020年はマレーシアのレストラン予約プラットフォームおよびSaaSプロバイダーのTABLEAPPと、台湾の家族向けアクティビティ予約プラットフォームのNicedayを買収するなど事業拡大を拡大した。FunNowは、創業以来、PChome、KKday、Wistronの企業ベンチャー部門を含む投資家から2,250万ドルを調達しており、世界的な投資家からも注目を集めている。

創業メンバーは旅行好きで、CEOの陳庭寬氏はオランダへの留学・勤務経験、ヨーロッパ中をバックパッカーとして回った経験も持つ。その影響もあってか、FunNowのアプリはオランダのライフスタイルである「予定にとらわれず今を生きる」をコンセプトに掲げ、「オンデマンド予約」という新たな市場を開拓した。「オンデマンド予約」は、大都市に住む人々のように活発に余暇を楽しむ人々を中心に需要がある。FunNow社は、その需要に応えるため、台北、東京、クアラルンプールなどの人口密集地域をターゲットエリアとした。

FunNowアプリの魅力

FunNowアプリは、若年層や都市部のライフスタイルのニーズに合致したサービスを提供することで人気を集めている。具体的にどのような機能が支持されているのか紹介する。

直前・即時予約が可能

FunNowの最大の差別化要因は、直前かつ即時予約が可能な点だ。Booking.com、Airbnb、OpenTableのような従来の予約アプリは、リードタイムの長い計画的な予約をユーザーに促すことで、サービスによる収益の見通しが立てやすくなるといったサービス提供側のメリットに立った設計になっている。

一方FunNowは、ホテル、レストラン、スパ、エンターテイメントなどの直前かつ即時予約に重点を置いている。この機能により、夜の外出や急な宿泊など、迅速な予約を必要とする突発的な消費者ニーズを満たすことを可能にしている。

②頻繁な当日割引とフラッシュセール

当日予約割引やフラッシュセールを頻繁に実施している点も、FunNowの特徴といえる。このようなコストパフォーマンス戦略は、割引や値下げセールを利用した購買を好むアジア圏、特に東南アジア諸国で非常に有効だ。また、前もって予定を決めずに突発的に計画を立てる若年層の傾向を把握し、ターゲットユーザーの需要に合わせたサービスを提供している。

③ローカル体験のキュレーション機能搭載

FunNowは、特別なイベントやプロモーション、あるいはユーザーの好みや人気のスポットに基づいたおすすめなど、当該地域で体験可能な情報を膨大なデータからカスタマイズしてリコメンドすることができる。このパーソナライズされたアプローチは、その土地ならではの体験を楽しみたい人々にとって、直前であっても予約し体験することができるとあって好評だ。特にアジア圏は、各国で異なる言語・商慣行があり、移動はしやすいけれどなかなか現地のユニークなアクティビティに参加しにくいという障壁があったが、FunNowのアプリにより、現地の情報を苦労して収集せずとも、気軽に体験に参加することが可能となった。

FunNowが直面するオンデマンド予約の課題

都市部の若者層、突発的な計画を好む人々をターゲットに「オンデマンド予約」ビジネスを推進してきたFunNowだが、技術面や期待値コントロールなど、課題も多く存在する。今後いかにリスク要素を減らしていけるかが、事業拡大・強化にとって重要なポイントとなる。

技術的な改善

オンライン予約サービスは、システムの機能、セキュリティ、信頼性に影響を与える技術的な不具合への対処が常に課題となる。技術的な不具合とは、エラー、遅延、オーバーブッキング、またはデータ漏洩のことを指し、企業の評判・収益低下に直結する。とりわけオンデマンドサービスは「ニーズが発生したときに、適切なタイミングに正確に応える」ことを強みとしているため、技術力の継続的な改善により精度を高めていくことが必須条件だ。アプリ機能を定期的にテストし、パフォーマンスを監視し、緊急事態に備えて緊急時対応計画を立てておくことも重要だ。

高すぎる期待値のコントロール

利便性、スピード、正確性、パーソナライゼーションと、技術が進歩し様々なサービスが出てくることに並行して、顧客は機能の多さ、品質の良さを求め、期待値は非常に高くなっている。特に、サービスがユーザーフレンドリーで応答性が高く、安全であり、適切な情報が扱われていること、様々なオプションやインセンティブが提供されることを期待している。

すべてに同時に対応することは困難なため、優先順位づけやどの機能に特化するのかなど、サービスのポジショニングや棲み分けをすることが必要だ。また、電話、メール、チャット、ソーシャルメディアなどの複数のチャネルを通じて顧客サービスとサポートを提供することで、高い期待値を緩和することも有効な手段となる。

今後の展望

これまでオンデマンド予約が響く層をターゲットに設定してきたFunNowだが、今後は対象範囲を大人向けの都市型レジャーから、子供向けの学習型アクティビティまでサービスラインを拡大するという。

FunNowは2021年にNicedayを買収。Nicedayでは、子供向けの料理教室や、小さな子供向けのペイントボール講習会、親子レーシングカーキャンプなど、さまざまなアクティビティを提供しており、この買収により、キッズラーニング市場への参入を実現したことになる。少子化が進む中で親が子にかける予算は増加傾向にあり、この市場の開拓余地は大きいだろう。

終わりに

Uberで一気に知名度を上げたオンデマンド予約サービスだが、エコシステムの構築や高度なデジタル技術が必要となるため、参入障壁は高い。一方で、サービス提供者やパターンも多くないため、地域・領域・ターゲット層を設定し、実現する技術力を確保できたならば、成功する可能性は大いにある。

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情報参照先:

この記事を書いた人

Aizawa

記事編集クリエイター

大学時代にアメリカへの留学を経験し、その際に異文化への関心が一層深まりました。
現在も海外のライフスタイルに強い興味を持ち、特に北欧やフランスの生活文化をウォッチしています。
これからも読者の皆様に面白い話題を提供できるよう心がけて参ります!

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