【海外進出の成功事例】「Youvit」がインドネシアで掴んだグミサプリ市場

目次

はじめに

近年、グミサプリメントが世界的に人気を集めている。従来、子供向けのお菓子と考えられていたグミが、大人にも広く受け入れられ、サプリメントとしての役割も担うようになっている。コロナ禍によるリモートワークの増加や健康意識の高まりを背景に、手軽で効果的な栄養補給手段として、グミサプリメントが注目されている。若年層を中心に人気が広がり、市場のさらなる成長が期待されている。本記事では、インドネシアで2017年から市場シェア1位を維持するサプリメントカンパニー「Youvit」を事例に、その成功要因と市場浸透戦略について分析する。

サプリメントカンパニー「Youvit」とは

「Youvit」は、2016年に創業したインドネシアの サプリメントカンパニーである。本社はジャカルタにあり、インドネシア市場でトップシェアを誇る。ミレニアル世代を中心に人気を集めており、特にビタミングミが好評である。免疫力向上、育毛、美肌、子供の栄養バランスなど、幅広いニーズに対応する商品を展開している。天然成分のみを使用し、人工甘味料、着色料、香料は不使用である。1日に必要な栄養素を、手軽でおいしいグミで摂取できる点が支持されている。


Youvitは、「インドネシア人の90%以上が野菜や果物を十分に摂取していない」というデータに着目し、成人のビタミン・ミネラル不足を解消する製品の開発に着手した。当時のサプリメント市場では、1日に必要な全てのビタミンを含む製品が不足していた。また、含有量も適切でないものが多く、推奨量を満たしていないか、過剰になっているケースが見られた。これらの課題を解決するため、「ミレニアル世代向けに、高品質で手頃な価格のビタミン製品を開発する」というコンセプトを掲げた。このコンセプトは、美容や健康に関心の高いミレニアル世代をターゲットとし、マルチビタミンをフルーツフレーバーのグミで提供することで、継続的な摂取を促すという戦略に基づいている。

インドネシアでの成功を読み解く3つのキーポイント

Youvitは、2016年の創業からわずか1年で、インドネシア市場のトップに躍り出るという、驚異的なスピードで成長した。新規参入企業であるYouvitが、既存の競合他社を抑えて、短期間で市場シェアを獲得できた背景には、独自の戦略があったと言えるだろう。ここでは、Youvitの成功要因となった主要な取り組みについて解説する。

オープンデータの活用

Youvitは、インドネシア政府が公表する健康データを参考に、事業戦略や商品開発を行っている。例えば、保健省が発表した「インドネシア人の90%が野菜や果物を十分に摂取していない」というデータに着目し、それを創業コンセプトの基盤とした。近年、生成AIなどの技術革新により、個人情報や機密性の高いデータの活用が容易になっている。しかし、Youvitの事例は、オープンデータの活用も依然として有効であることを示している。Youvitは、インドネシアの国民の健康状態を把握するために、政府が公表するデータを利用した。これは、信頼性の高い情報源から客観的なデータを得るという点で、非常に有効な手段であったと言える。

近年、生成AIなどの技術革新により、個人情報や機密性の高いデータの活用が加速している。一方で、Youvitの事例は、オープンデータの活用も依然として有効であることを示している。Youvitは、インドネシアの国民の健康状態を把握するために政府が公表するデータを利用し、信頼性の高い情報源から客観的なデータを得ることで、国民の栄養不足という課題を明確に捉え、効果的な商品開発につなげることができた。これは、オープンデータの活用が、企業の成長にとって大きなメリットをもたらすことを示す好例と言える。

地域特性や消費者ニーズに応える商品開発

インドネシアを含むASEAN諸国では、伝統的な民間療法や治療薬としてのビタミン剤の使用が多い。Youvitは、これらの文化を考慮し、抵抗感なく受け入れられるサプリメントとして、グミを選択。ASEAN諸国では、高品質なサプリメントは高価である一方、健康意識の高まりから、手頃な価格で高品質なサプリメントを求めるニーズが高まっていた。Youvitは、この需要と供給のギャップに着目し、高品質で手頃な価格のビタミングミを開発。欧米で成功したビジネスモデルをASEAN諸国にそのまま導入するケースは多いが、Youvitでは、インドネシアの文化や消費者のニーズを深く理解し、商品開発に活かしている点が特徴である。グローバル企業が新たな市場に進出する際に、独自性を維持するか、地域に適応するかという課題を考える上で、重要な参考事例になるだろう。


Youvitは、消費者ニーズを捉えた商品開発にも力を入れている。例えば、「インドネシアの子供の90%が栄養不足」という調査結果に基づき、子供の成長に必要な栄養素を配合した「子供用マルチビタミン」と「DHAキッズグミ」を開発した。また、健康な髪を求める消費者の声に応え、育毛効果のある成分を配合したヘアケアサプリメントグミも開発した。Youvitは、これらの商品を通じて、体の内側からの健康の重要性を訴求している。

地域や消費者との一体感醸成

Youvitは、地域社会への貢献にも積極的に取り組んでいる。売上の一部を還元し、孤児院や児童養護施設にビタミン剤を無償で提供する「キッズ向けVits」という活動を行っている。消費者がYouvitの商品を購入するごとに、YouvitがPeduli Anak財団にビタミングミを寄付する仕組みである。Youvitは、この活動を通じて、事業の成長と社会貢献の両立を目指している。消費者は、商品を購入することで、社会貢献活動に参加できる。地域社会への貢献活動は、Youvitのブランドイメージ向上に繋がり、顧客ロイヤリティを高める効果も期待できる。Youvitは、社会貢献活動を通じて、地域社会との連携を強化し、独自のブランドポジションを確立しようとしている。

ASEAN諸国の人々の健康の改善に向けて

2022年10月、Youvitはユニリーバのベンチャーキャピタルなどから600万ドルの資金調達を実施し、マレーシア市場に進出。マレーシアは、インドネシアと文化的に類似しており、イスラム教徒が多い国である。YouvitのCEOであるWouter氏は、「マレーシア市場では、革新的で斬新なブランドが求められている」と述べている。Youvitは、インドネシアでは富裕層をターゲットとしていたが、マレーシアでは中間層にも焦点を当てる必要があると考えている。ただし、健康志向の高まりや中間層の増加といったトレンドは、マレーシアでも共通している。Wouter氏は、マレーシアに加えて、シンガポール、タイ、フィリピンなど、他のASEAN諸国への進出も計画している。Youvitは、企業や政府機関との連携を通じて、従業員向けの健康増進プログラムなどを提供している。BtoCに加えて、BtoB、BtoGビジネスも展開することで、事業の拡大を図っている。

今後の広がりはいかに

インドネシアでトップシェアを獲得したYouvitは、ASEAN諸国全体の健康増進に貢献することを目指している。Youvitは、高品質なサプリメントグミを手頃な価格で提供することで、インドネシア市場で成功を収めた。このことから、日本の食品メーカーの高い技術力や品質管理能力は、インドネシア市場でも評価される可能性がある。サプリメントグミを幅広く展開するヘルスケアカンパニー、高品質を保証する技術を有するテックカンパニー、コミュニティの健康増進を図るソーシャルカンパニー、など様々な側面を持つYouvitであるが、どのようなシナリオでどのような側面が強化されていくのか、期待したい。

Archesでは、インドネシアの消費者の嗜好やニーズ、ライフスタイルなどを把握するための市場調査、競合他社の分析、効果的なマーケティング戦略の立案(宗教や文化に配慮したマーケティング戦略を含む)、流通チャネル開拓、ハラール認証取得などの規制に関する情報提供等、幅広く日本企業の海外進出を支援しております。Youvitのようなスタートアップの成功事例や海外市場調査について関心がある方は、ぜひArchesまでお問い合わせください。

情報参照先:

この記事を書いた人

Aizawa

記事編集クリエイター

大学時代にアメリカへの留学を経験し、その際に異文化への関心が一層深まりました。
現在も海外のライフスタイルに強い興味を持ち、特に北欧やフランスの生活文化をウォッチしています。
これからも読者の皆様に面白い話題を提供できるよう心がけて参ります!

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