【海外成功事例】東南アジアで拡大するユニークなサブスクリプションサービス成功事例3選!

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目次

はじめに

近年、「サブスク(サブスクリプション)モデル」は、ソフトウェアや音楽配信だけでなく多様な業界に広がっている。特に東南アジアでは、海外市場ならではの発想で生まれたユニークな定額制サービスが次々と登場し、成功を収めている。格安航空券の乗り放題パス家具レンタル家事代行サービスまで、従来は考えられなかった分野にサブスクビジネスが浸透し始めている。本稿では、東南アジアの注目すべきサブスク成功事例3選を取り上げ、その成長の背景とビジネス戦略を分析する。

格安航空のサブスクサービス:AirAsiaの「乗り放題パス」

東南アジアを代表する格安航空会社(LCC)であるAirAsiaは、航空業界では珍しいフライト乗り放題の定額サービスを打ち出した。「Unlimited ASEAN Pass」と呼ばれるこのパスは、東南アジア域内の国際線が1年間定額で乗り放題になる画期的な仕組みであり、文字通り「航空券のサブスク」と言える。例えばマレーシアでは1年間の乗り放題パスが1,188リンギット(約3.6万円)で販売され、パス購入後の1年間は対象路線の航空券を追加料金なしで何度でも予約可能となる(税金や空港使用料は別途必要)。まさに飛行機を定期券感覚で使えるサービスである。

エアアジアによると、この乗り放題パスの前身サービスでは累計8万席以上のフライトが利用者に引き換えられ、ホテル宿泊50%割引などの特典も相まって大きな反響を呼んだ。Unlimitedパスには航空券だけでなく提携ホテルの宿泊割引や空港送迎ライドシェアの無料クーポン付与など旅行全体をお得にする特典も組み込まれており、エアアジアは従来の航空券販売の枠を超え旅行関連サービスを定額パッケージ化することで、新たな収益モデルを確立しようとしている。

もっとも、「飛行機のサブスク」には制約もある。予約は出発日の2週間以上前に行う必要があることや、各フライトの無料座席枠には限りがあるため、利用時には柔軟な旅程計画が求められる。それでもこの大胆な試みは、従来の航空券販売モデルに一石を投じ、東南アジアの旅行スタイルに新風をもたらしている。今後、他の航空会社や地域でも同様の定額制旅行サービスが広がる可能性があり、業界動向から目が離せない。

家具サブスクで暮らしに柔軟性:シンガポール発「Hamlet」の挑戦

東南アジアでは、家具を所有せず必要な期間だけ使うという新発想も登場している。シンガポールのスタートアップ企業が提供する「Hamlet Furniture(ハムレット・ファーニチャー)」は、ベッドやテーブル、ソファといった家具・インテリアを月額定額でレンタルできるサブスクリプションサービスだ。取り扱う家具は100種類以上にもおよび、ユーザーは自宅やオフィスのニーズに合わせて必要な家具を選び、必要な期間だけ利用することができる。レンタル期間は最低3カ月からで、例えばオフィス用の椅子は月額約10シンガポールドル(約770円)と手頃な価格に設定されている。購入すれば高額な高級家具であっても、定額制であれば無理なく試したり入れ替えたりできるのが大きなメリットだ。

この家具サブスクサービスの特徴は、利用者の利便性を徹底追求している点である。家具の配送から組み立て・設置、さらには契約終了時の解体・撤去まで、すべてサービス側で請け負うため、利用者は手間なく家具を導入・返却できる。利用者にとって面倒な手続きや作業を省き、「借りるだけで使える」手軽さを実現しているのだ。

背景には、シンガポールをはじめ東南アジアの都市部における居住や働き方の変化がある。若い世代を中心に転勤・転居が増え、「所有より利用」を重視する価値観が広がっている。また、スタートアップ企業など事業環境が変化しやすい組織では、オフィス家具を購入するより必要なときに必要なだけレンタルしたほうが合理的だ。こうしたニーズに応えるHamletの家具サブスクは、初期費用を抑えたい個人や企業に支持されている。

家事代行もサブスクの時代:シンガポール発「Butler」のサービス

サブスクは日常のサービス分野にも及んでいる。シンガポール発の「Butler In Suits」は、自宅の掃除や洗濯・買い物といった家事代行を定額で請け負う革新的なサービスだ。2016年にサービスを開始した当初から「世界初の毎日家事代行が利用できるサブスクリプションサービス」であることを謳っている。まるで自宅がホテルのように常に整った状態になるという触れ込みで、忙しいミレニアル世代の支持を集めて急成長した。

Butlerのサービスでは、利用者は月極のサブスク契約を結び、プロのハウスキーパーによる定期訪問を受ける。料金は月額定額制で契約期間の縛りもなく、例えば週1回の訪問プランは月額約240シンガポールドル(約2万円強)、毎日訪問するプランでも月額約330ドル(約3万円弱)ほどに設定されている。専属メイドを住み込みで雇う場合と比べてハードルが低く、必要なサービスだけをプロに外注できる点が受け入れられた理由だ。

実際、Butlerでは高級ホテル出身のスタッフなどホテル業界のノウハウを活用し、クオリティの高い清掃・家事サービスを提供している。利用者は仕事から帰宅すると部屋が清潔に整い、洗濯物も片付いているといった「ホテルライクな暮らし」を日常で享受できる。シンガポールでは外国人メイドを住み込みで雇う家庭も多いが、近年は核家族化や共働き世帯の増加に伴い、必要な時だけ使える家事サブスクへの関心が高まっている。

Butlerの成功は、従来富裕層の特権と見られていた家事代行サービスを、ITを駆使したオンデマンド型の定額サービスへと変革した点にある。アプリで申し込みから支払いまで完結し、サービス品質の管理も徹底することで、サブスクでも安心して任せられる体制を整えた。家事代行のサブスク化は、今後他の都市にも波及しうる新たなビジネスモデルとして注目されている。

東南アジアにおけるサブスク成功のポイント

新興市場である東南アジアでは、急速な都市化とデジタル化に伴い消費者のニーズも多様化している。各社はいずれも既存の常識にとらわれず、横断的な発想で「定額制×◯◯」という新サービスを創出した点が特徴的だ。

特に以下の3つのポイントが成功要因として挙げられる。

未充足ニーズへの適合

東南アジアで成功しているサブスクサービスはいずれも、従来は満たされていなかった消費者ニーズに焦点を合わせている。AirAsiaの「Unlimited Pass」は、安価に何度も航空機に乗りたいという旅行者の切実な要望に応えたものだ。RM499(約1万3,000円)で1年間対象フライトが乗り放題というこのパスは、航空券代の負担を気にせず気軽に飛行機移動を楽しみたい層のニーズを掘り起こした。

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Hmletの家具レンタルは、短期滞在者や転勤者が 家具を購入せず に手軽に生活環境を整えたいというニーズに着目したサービスである。必要な家具・家電を 月単位で借りられる ため、入居時の初期費用を抑えつつ身軽に引越しできる点が支持された。

Butler(バトラー)の家事代行サービスも同様に、シンガポールの多忙なビジネスパーソン家庭が 住み込み家政婦を持たずに クリーニングや掃除を任せたいという潜在的な要望に応えた。世界初の「毎日利用できる家事代行サブスク」という切り口で日常的な掃除ニーズを満たし、従来は諦められていた細かな家事サポートへの需要を開拓したのである。

値ごろ感のある価格設定

価格戦略の巧みさも、これらサブスク成功事例に共通するポイントだ。各サービスとも利用者に「それならお得だ」と思わせる絶妙な料金設定を行っている。AirAsiaは通常高額になりがちな航空移動を定額制で破格の水準に抑えた。例えばRM499のパスを導入したことで、一回ごと航空券を購入する場合と比べ圧倒的な割安感を提供している。実際、クアラルンプール〜大阪往復が約5,400円になるなど、驚くほど安い旅が可能となった。

Hmletは家具をサブスクで利用することで 購入するより安く済む 料金体系を打ち出した。レンタル期間を最低3カ月とする代わりに月額料金を低く設定し、利用者は必要な家具を必要な期間だけ借りられる。例えばオフィス用の椅子なら月額約10シンガポールドル(約770円)程度から利用でき、まとめて家具を買い揃える場合に比べ初期コストを大幅に削減できる。

Butlerも高品質な家事サービスを手の届きやすい価格で提供した。毎日利用可能な家事代行サービスを1時間あたり約30シンガポールドル(約3,000円)から開始できる料金プランは、シンガポールでフルタイムのメイドを雇う費用や都度依頼の専門清掃サービスと比べて格段に利用しやすい水準である。

利便性と信頼性の追求

これらのサービスが継続的に支持される背景には、ユーザー体験の利便性とサービス提供の信頼性を徹底的に追求している点がある。AirAsiaはUnlimited Passを自社の予約システムに組み込み、パス購入者がオンライン上でプロモコードを入力するだけで割引予約できる仕組みを整えた。

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追加料金なしで専用カウンターが使える特典を付与するなど、搭乗手続きも含めてスムーズに利用できる工夫がなされている。またLCC最大手というブランドへの信頼 もあり、利用者は「本当にこの価格で飛行機に乗れるのか」という不安なくサービスを受け入れた。

Hmletはプラットフォーム上で契約から支払いまで完結でき、ユーザーが 必要に応じて家具を交換・返却できる柔軟性を備えている。家具の配送・組立・撤去をすべて自社で担い、気に入ればそのまま買い取る選択肢も提供することで、利用者は手間やリスクを感じず安心して借り続けられる。

Butlerはスマートフォンのアプリ経由で家事代行を予約・管理できる利便性に加え、サービス提供者の質にも注力している。利用者ごとに専任のハウスキーパーを割り当て、厳選された有資格のスタッフが対応する体制を構築したうえ、自社開発の鍵管理プロセスや自動化システムにより常に高水準のサービス品質を維持している。こうした信頼性の確保 によって「任せても大丈夫」という安心感を醸成し、ユーザーの長期利用を支えているのである。

終わりに

東南アジア発のこれらユニークな定額制サービスはいずれも、それぞれの領域で新たな価値を提供し、市場に大きなインパクトを与えた。各事例から学べるのは、海外市場でイノベーションを起こすには徹底した事前リサーチと大胆な発想が不可欠だということである。現地の消費者ニーズや競合状況を見極め、自社の強みを生かしたサービス設計を行えば、たとえ異業種であっても定額制モデルで新たな価値を提供できることを彼らは示している。

今後、海外市場におけるサブスクビジネスの可能性はさらに広がる。日本企業にとっても東南アジアは有望な成長市場だが、そのチャンスを掴むには現地市場の正確な理解と戦略的な計画立案が重要である。

Archesでは、東南アジアの消費者の嗜好やニーズ、ライフスタイルなどを把握するための市場調査、競合他社の分析、効果的なマーケティング戦略の立案(文化や傾向を鑑みたマーケティング戦略を含む)、東南アジアにおける各種規制に関する情報提供、現地パートナーの紹介等、幅広く日本企業の海外進出を支援しています。ぜひお気軽にお問合せください。

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この記事を書いた人

Kitagawa

記事編集クリエイター

趣味は旅行で、アジアを中心に様々な国を訪れています。
現地の人々の生活や文化に触れることで、新しい視点や気づきを得られるのが楽しみです。
好奇心旺盛な性格を活かして、常に新鮮な目線でお届けできればと思います!

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