【海外成功事例】中国発「MIXUE」は海外市場でなぜ成功したのか?東南アジアカフェ市場に見る価格戦略とローカル適応

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はじめに:MIXUE海外進出の軌跡と成果

中国発のMIXUE(蜜雪冰城)は、海外進出において驚異的な成功を収めたカフェチェーンの代表例である。1997年に中国で創業した同社は、本国で急成長を遂げた後、東南アジアを中心に世界展開を加速させた。その結果、2024年時点で店舗数は世界合計45,000店を超え、スターバックスやマクドナルドを抜いて世界最大の外食チェーンとなった。

海外店舗も約4,800店に上り、インドネシアでは2,600店以上を構えるなど現地消費者に広く浸透している。現地では「空き店舗があればすぐMIXUEになる」と冗談が語られるほどで、低価格でアイスクリームや紅茶ドリンクを提供するMIXUEは東南アジア各国で絶大な人気を博している。まさにMIXUEは海外進出成功事例として、中国ブランドがグローバル市場で存在感を示した象徴と言える。

中国ブランドの東南アジア展開動向

近年、中国の外食ブランドはこぞって東南アジア市場へ進出しつつある。その勢いを示すように、中国発の飲食チェーンは東南アジアで合計6,100店以上を展開し(2024年末時点)、MIXUE以外にもLuckin Coffee(瑞幸咖啡)Haidilao(海底捞)HeyteaChageeなどが現地で急速に店舗網を拡大している。背景には、中国国内市場の競争激化によって新たな成長機会を海外に求める動きがある。

実際、MIXUEやChageeといった中国ブランドは2019年から2024年にかけて東南アジアでの店舗数を80%以上も増加させた。彼らはデジタル技術を駆使したマーケティングや自動化による効率化にも優れ、現地パートナーとの提携も積極的だ。こうした中国ブランドの東南アジア展開は、単に安価な製品を送り出すだけでなく、現地の商習慣に適応しスピーディに市場攻略する新たな潮流となっている。

東南アジアのカフェ市場とMIXUEの戦略

東南アジアのカフェ市場は近年急成長中で、その潜在力の大きさがMIXUE成功の土台となった。同地域の紅茶・コーヒー専門店市場規模は2024年に47億ドルに達し、2029年まで年率9%の成長が見込まれている。東南アジア諸国は人口の平均年齢が若く、中間所得層も拡大しており、この若年層の多さと中間層台頭が海外チェーンにとって肥沃な市場を生み出している。消費者は新しいブランドを試すことに積極的で、手頃な価格で気軽に楽しめる商品が好まれる傾向にある。


こうした市場特性に対し、MIXUEは徹底した低価格戦略と豊富なメニューで応えた。例えば黒糖ミルクティー1杯を約1ドル強(約150円)で提供し(同業他社の3分の1の価格)アイスクリームを約0.5ドル(約70円)という破格で販売するなど、競合を大きく下回る価格設定を実現している。ほぼ全店舗をフランチャイズ展開し、本部が原材料を一括調達・供給する強力なサプライチェーン体制を敷くことで低コストかつ品質安定を両立している点も強みだ。



さらに、中国発ブランドならではの戦術として、各国の嗜好に合わせた新商品を矢継ぎ早に投入し続ける施策が挙げられる。実際、中国系カフェ企業は毎月のように新メニューを投入し、限定キャンペーンやSNS映えする話題作りで消費者の関心を引きつけている。現地の果物フレーバーを取り入れた商品開発や、ソーシャルメディア上でのインフルエンサー活用なども積極的に行い、市場ごとの需要に合わせた柔軟な対応を可能にしている。このようにMIXUEは低価格×高速展開×現地適応という戦略で東南アジアのカフェ市場を席巻し、カフェ業界における海外成功事例となったのである。

ゴンチャの海外進出:お茶ブランド成功の事例

アジア発のお茶ブランドとしてグローバル展開に成功した例にゴンチャ(貢茶)の成功要因を解説したい。ゴンチャは2006年に台湾で創業したティーカフェチェーンで、濃厚な台湾茶にタピオカやミルクフォームなどを組み合わせたカスタマイズ可能なドリンクを武器に人気を博した。東アジアや北米など積極的に海外展開を進め、現在では世界でおよそ2,200店を展開するまでに成長している。

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中でも韓国での成功は突出しており、国内店舗数はスターバックスを上回る勢いで増加し韓国がゴンチャ最大の市場となっている。日本でも2015年の上陸以降、タピオカブームを追い風に全国各地へ出店を拡大し、2023年時点で約160店舗に達した。ゴンチャの海外進出手法はMIXUEとは対照的だ。各国でマスターフランチャイズ契約や合弁を活用しつつ、徹底した品質志向とサービス差別化でブランド価値を高める戦略を取っている。



例えば原材料には台湾阿里山産の高級茶葉を使い抽出時間や温度まで最適化するなど「最高のお茶」を提供する姿勢を貫いており、紅茶・烏龍茶にフルーツやミルクを合わせた多彩なメニューを開発して顧客が1万通り以上の組み合わせを楽しめるカスタマイズ性を持たせている。さらに学生割引を導入したり高速オペレーションで待ち時間短縮を図るなど、各国の市場環境に応じた創意工夫も凝らしている。こうした取り組みにより、ゴンチャはタピオカブーム後も成長を続ける持続的なビジネスモデルを確立し、アジア発のお茶ブランドとして世界的な成功事例となった。

終わりに

MIXUEとゴンチャという二つの事例は、アジア発カフェブランドが海外市場で成功を収める異なるアプローチを示している。MIXUEは低価格路線とフランチャイズ網を武器に新興市場を席巻し、一方のゴンチャは高品質な商品と差別化サービスでグローバルファンを獲得した。共通しているのは、進出先の市場特性を的確に捉えた戦略と、現地消費者のニーズへの柔軟な対応である。東南アジアのような成長市場では特に、急速な拡大だけでなく継続的なイノベーションとローカライズが成功の鍵を握る。中国ブランドの快進撃に見られるように、今後も東南アジアをはじめとする海外市場で新たな成功事例が生まれていくだろう。それは同時に、グローバル競争の中で各ブランドがいかに独自価値を磨き上げ、現地に根付くことができるかという挑戦でもある。各社の動向から、海外展開におけるヒントと教訓が今後も多く得られるに違いない。

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この記事を書いた人

Kitagawa

記事編集クリエイター

趣味は旅行で、アジアを中心に様々な国を訪れています。
現地の人々の生活や文化に触れることで、新しい視点や気づきを得られるのが楽しみです。
好奇心旺盛な性格を活かして、常に新鮮な目線でお届けできればと思います!

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