【海外成功事例】中国・韓国アウトドアギア市場から学ぶブランド戦略|日系企業が取るべき一手とは?

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目次

はじめに

中国および韓国のアウトドアギア市場は、近年大きな変革と成長を遂げている。両国ではキャンプ用品を中心にアウトドア人気が高まり、それに伴い市場規模が急拡大している。本稿では、アウトドアギア関連の海外市場調査データや現地動向に基づき、アウトドア 中国とアウトドア 韓国の最新市場トレンド、および各市場で顕著な成功ブランド戦略を解説する。

中国アウトドアギア市場の現状とトレンド

中国ではここ数年、露営(キャンプ)ブームが社会現象となっている。都市化と所得向上を背景に若年層を中心とする消費者が自然志向のレジャーを求め、キャンプやハイキングなどアウトドア活動への参加が急増している。特にコロナ禍以降は、密を避け安全に楽しめる国内旅行形態としてキャンプが脚光を浴び、一過性の流行に留まらず新しいライフスタイルとして定着しつつある。SNS上でもキャンプ場の映える写真や洗練されたギアが頻繁に共有され、アウトドア文化の拡散に拍車をかけている。

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市場規模の伸びも著しい。2022年の中国キャンプ経済規模は1134億元(前年比+51.8%)および関連込み5816億元(+52.6%)に達した。さらに、アウトドアギア関連の海外市場調査レポートによれば2025年にはそれぞれ2483.2億元と1兆4402.8億元に拡大すると予測されている。この急成長を支える要因として、政府によるアウトドア・スポーツ振興策が挙げられる。

中国政府は施設整備やキャンプ場の拡充、アウトドア大会の開催支援など産業育成を積極的に推進しており、2025年までにアウトドアスポーツ産業全体で3兆元超規模を目指す計画も発表している。さらにラグジュアリーブランドがアウトドア分野に参入しキャンプをテーマにした商品展開を行うなど、アウトドアが洗練されたライフスタイルとして位置付けられている。こうした追い風を受け、中国のアウトドア市場は今後も高成長を維持すると予想される。

韓国アウトドアギア市場の現状とトレンド

韓国のアウトドア用品市場規模は世界第2位とも言われ、2000年代以降安定した成長を続けてきた。韓国の消費者はアウトドアファッションへの関心が高く、日常の服装にもアウトドアウェアを取り入れるほどである。特に 2010年代にはアウトドアウェアが日常のカジュアルファッションとして大流行し、市場が急拡大した経緯がある。

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近年ではキャンプブームがさらに進化し、「K-キャンプ」と称される独自のキャンプ文化が形成されている。キャンプは単なる野外活動ではなく、自宅のリビングを野外に持ち出すような快適志向のグランピングへと発展している。韓国のキャンパーは広々とした大型テントやタープを設営し、ソファのようなエア家具や高性能のポータブル家電を持ち込む。サイトを彩る洗練されたデザインギアや、自宅以上の快適さを追求するヒーター・クーラー等の高機能機器が人気となり、キャンプ用品市場を牽引している。こうした傾向から、韓国のアウトドア市場は単なる一過性のブームを超え、高付加価値なレジャー産業へと成熟しつつある。

一方、2023年以降は成長ペースがやや鈍化したが、市場の基盤は依然強固である。ライト層の離脱により初級ギアの需要は落ち着いたものの、コアな愛好者はむしろキャンプ頻度を増やし、より質の高い道具を求めている。実際、新興のガレージブランドが熱心なファンを獲得して売上を伸ばすなど、ニッチな高品質路線のメーカーが存在感を示している。韓国市場ではデザイン性や機能性に優れた差別化製品を投入し、ユーザー体験を重視する戦略が重要となっている。

主な成功ブランド戦略の事例

急成長する中国市場と成熟した韓国市場。それぞれで成功しているブランドは独自の戦略で顧客の支持を獲得している。

中国アウトドア市場における国産・海外ブランドの競争戦略

まず中国では、国産ブランドの台頭が著しい。代表例が中国スポーツ用品大手の ANTA(安踏)である。同社は積極的な M&A によりアウトドア・スポーツ関連のマルチブランド戦略を展開している。

参考記事:【中国スポーツ用品のグローバル戦略】東南アジアで拡大する「ANTA」の勢いに迫る

また他にも、NaturehikeMOBI GARDENKAILASなどが国産ブランドの代表例として注目されている。Naturehike(ネイチャーハイク、2005年創業)は高い技術力を活かしてテントや寝袋、アウトドア家具まで幅広い製品を製造し、「ハイスペックな製品を圧倒的なコストパフォーマンスで提供する」をモットーに高品質な製品を展開している。その優れたクオリティと手頃な価格で世界中のアウトドアファンから高評価を受けており、中国を代表する信頼ブランドとして成長している。



MOBI GARDEN(モビガーデン、2003年創業)は中国テント市場でトップシェアを誇る総合アウトドアブランドで、高品質なギアをお手頃価格で提供する「中国のモンベル」とも称される高コスパ戦略が強みである。自社工場で厳重な品質検査を行うことで製品の信頼性を確保し、実際に多くの有名ブランド向けにテントのOEM供給を行っている点も評価されている。



KAILAS(カイラス、2003年創業)はクライミング・登山用具を中心とする専門ブランドで、ウェアからテント、クライミングギアに至るまで幅広い製品ラインナップを展開している。中国国内では350店舗以上の直営店と約650店舗のフランチャイズを擁し、アウトドア・クライミング用品市場で圧倒的な知名度と影響力を築いている。


これらの国産ブランドはいずれも技術革新とコスト戦略を両立し、中国国内の高まるアウトドア需要を巧みに取り込んでいる。一方で海外ブランドも中国市場攻略に成功している。韓国発のKolon Sport(コーロンスポーツ)は現地パートナーとの独占合弁でブランド展開を進め、2023年には中国のアウトドアファッション分野で約8%の市場シェアを獲得した。また日本のスノーピークやモンベルといったブランドは、高品質で機能的なギアが中国の愛好家に支持されており、近年人気を集めている。これら海外ブランドはそれぞれの強みを生かしつつ、現地ニーズに合わせた商品投入やマーケティングを行うことで、中国市場で確固たる地位を築き始めている。


機能性で進化する韓国アウトドアブランドの成長モデル

韓国市場では、ギアに特化したブランドが独自の路線で存在感を示している。Helinox(ヘリノックス、2009年創業)は折りたたみチェアのパイオニアで、韓国DAC社製の超軽量合金ポールを用いた「チェアワン」が世界的にヒットし、一躍ブランドを代表する製品となった。現在では多様なコンパクトチェアやテーブルを展開し、ロースタイルキャンプブームを牽引している。



ZEROGRAM(ゼログラム、2011年創業)はウルトラライト志向と環境配慮を掲げるブランドで、アメリカのロングトレイル体験から生まれた「Papillon1」といった自立型超軽量テントを開発している。

高い耐風性を備えた斬新なポール構造や設営のしやすさで評価を獲得し、持続可能なアウトドアライフを志向する層から支持を得ている。MINIMAL WORKS(ミニマルワークス、2013年創業)は「軽量かつ素早い設営」をブランド理念とし、アルミ製の簡易テーブルや新型シェルターなど、シンプルな製品設計でキャンプの手間を省く製品を開発している。韓国のこれらブランドは、洗練されたデザインと高度な機能性で差別化を図り、成熟した市場でニッチなファン層を獲得している。

終わりに

以上のように、中国と韓国のアウトドアギア市場は、それぞれ固有の文化と市場環境の下で発展を遂げている。アウトドア 韓国では高度に洗練された消費者ニーズに応えるブランドが生き残り、アウトドア 中国では爆発的な新規需要を取り込む戦略が奏功している。両市場とも成長の余地は大きく、各ブランドが現地の嗜好や価値観を的確に捉えた戦略を展開していくことが、今後の国際競争で勝ち残る鍵となるだろう。

情報参照先:

この記事を書いた人

Kitagawa

記事編集クリエイター

趣味は旅行で、アジアを中心に様々な国を訪れています。
現地の人々の生活や文化に触れることで、新しい視点や気づきを得られるのが楽しみです。
好奇心旺盛な性格を活かして、常に新鮮な目線でお届けできればと思います!

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