【海外市場攻略】インドネシア ハラル市場における日系企業の課題と戦略とは?

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はじめに

インドネシアは世界最大のイスラム教徒人口を抱え、ハラル対応は日系食品企業にとって不可欠な要件である。現地で成功するには、ハラル認証の取得、流通網の確保、消費者嗜好への対応といった包括的な戦略が求められる。本記事では、インドネシアのハラル市場において日系企業が直面する課題と、それらを克服するための具体的な戦略について詳しく解説する。

ハラル市場とハラル食の定義

東南アジアのインドネシアとマレーシアは、イスラム教徒人口の多さからハラル食市場が巨大であることで知られている。インドネシアは世界最大のムスリム人口を抱える国であり、ハラルフード産業は同国のGDPの8.1%を占める重要な地位を占めている。

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さらに、世界全体で見てもイスラム教徒人口は増加を続けており、2030年には世界の4人に1人がイスラム教徒になると予測されている。それに伴い、イスラム教徒の食品市場規模は2021年の1.19兆ドルから2025年には1.67兆ドルに達すると見込まれており、両国のハラル市場は日本企業にとっても無視できないビジネスチャンスとなっている。

ハラル食品とは、イスラム教の教義に則り「許されたもの」を指す。具体的には、豚由来の成分やアルコールを含まないことなどが基本条件であり、認証機関の審査を経てハラルマークが付与された食品のみがイスラム教徒にとって合法的な食品となる。

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インドネシアでは、日本から輸入された食品であってもハラル認証がなければ消費者が購入を躊躇するケースが多く、ハラル対応の日本食品が待ち望まれてきた経緯がある。市場規模の大きさとハラルの重要性を踏まえると、インドネシアおよびマレーシアのハラル市場におけるビジネスチャンスは極めて大きいと言える。

ハラル認証取得の課題と対策

インドネシアでは、2019年施行の「ハラール製品保証法」に基づき、2024年10月17日以降、国内で流通・販売されるすべての食品・飲料にハラル認証取得が義務付けられる。

ハラル認証取得の要件とプロセス

ハラル認証は、ハラル製品保証庁(BPJPH)が発行し、製造工程や原材料が基準に適合していることを証明するものである。取得手順は以下の通りである。

  1. BPJPHへ申請(企業情報・原材料リスト提出)
  2. 書類審査(問題がなければ認証機関の指名)
  3. 工場監査(現地またはオンラインで実施)
  4. インドネシア・ウラマー評議会(MUI)での審議
  5. BPJPHより証明書発行

通常、書類審査から発行まで順調に進めば2~3週間程度であるが、実際には6~7か月かかるケースも報告されている。

コストと管理体制の課題

日本企業にとって最大の壁は、ハラル認証取得の手間とコストである。申請には詳細な書類準備と原材料のハラール性確認が必要であり、食品や設備の管理体制、従業員教育も求められる。

また、製造ラインではハラルとハラム(禁忌とされているもの)の分離が必要であり、社内プロセスの見直しが求められる。さらには、認証費用も無視できない。BPJPHによる手数料は、大企業・外国企業の場合、新規申請で約1,250万ルピア(約11万2,500円)、更新で500万ルピア(約4万5,000円)とされている。

物流の課題

インドネシア市場への参入において、物流面でも大きな課題が存在する。特に指摘されるのは、低温流通インフラの不足である。国内の冷蔵倉庫容量が不足しており、物流の制約がかかる点が問題視されている。また、島国という地理的特性上、地方都市への輸送は船便に依存するケースが多く、国内輸送コストの高騰や品質管理の課題も発生しやすい。

例えば、要冷蔵の商品をジャワ島から他の島へ輸送する場合、フェリーや長距離トラックを利用することになるが、温度管理設備の整っていない区間では品質リスクが高まる。加えて、輸入に関しても平均5~15%の関税に加え、10%の付加価値税(VAT)が課されるため、価格競争力を維持するのが難しい状況である。

日系企業の成功事例:課題克服のポイント

成功している企業は、早期かつ計画的な対応を実施している。例えば、キユーピーは2013年にインドネシアに工場を設立し、製造から販売まで現地化を推進した。これにより冷蔵マヨネーズやドレッシングを国内で迅速に供給でき、ハラル認証取得も社内で継続可能となった。

また、外食産業では吉野家がインドネシア進出時にタレの味付けを日本より甘めに調整し、現地の嗜好に合わせたメニューを提供することで市場に定着した。

終わりに

インドネシアのハラル市場は今後も拡大が見込まれ、日本企業にとって大きなビジネスチャンスとなる。しかし、成功にはハラル認証取得、物流面の課題克服、現地ニーズの把握が不可欠であり、本記事で紹介した事例のように、適切な市場調査と戦略的な対応が求められる。

日系企業がインドネシア市場において確実に成功を収めるためには、現地の消費者動向や法規制をより深く理解することが重要である。海外市場調査やハラル認証取得に関するサポートが必要な場合は、ぜひお問い合わせいただきたい。

Archesでは、国内外の企業事例・消費者の嗜好やニーズ、ライフスタイルなどを把握するための市場調査、競合他社の分析、効果的な事業戦略の立案(文化や傾向を鑑みたマーケティング戦略を含む)、現地における各種規制に関する情報提供、現地パートナーの紹介等、幅広く日本企業の海外進出を支援しています。

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この記事を書いた人

Kitagawa

記事編集クリエイター

趣味は旅行で、アジアを中心に様々な国を訪れています。
現地の人々の生活や文化に触れることで、新しい視点や気づきを得られるのが楽しみです。
好奇心旺盛な性格を活かして、常に新鮮な目線でお届けできればと思います!

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