【徹底解説】台湾スマート農業市場の最新動向!成功事例と日系企業に広がるビジネスチャンス

出典:Adobe Stock
目次

はじめに——スマート農業とは?台湾市場への期待

スマート農業とは、IoT(モノのインターネット)やAI、ロボット技術、ビッグデータ解析などの先端技術を活用して農業の効率化・高度化を図る取り組みである。東南アジアを含むアジア各国でも農業のデジタル化が加速しており、日本企業にとって有望な新市場だ。特に台湾のスマート農業市場は、政府の積極支援と高いICT技術力を背景に、今後大きな成長が期待されている。実際、台湾は日本以上に社会全体のデジタル化が進んでおり、日本政府もDX(デジタルトランスフォーメーション)のモデルケースとして注目するほどである。こうしたデジタル先進地である台湾のスマート農業動向は、東南アジア スマート農業市場への進出を検討する企業にとっても貴重な示唆を与えるだろう。

台湾の農業は現在、多くの課題に直面している。農業人口の高齢化と人手不足が深刻で、2021年時点で農業従事者約132万人のうち65歳以上が約56万人と4割以上を占める。また食料自給率も低下傾向にあり、2022年には30.7%まで落ち込んだ。このように台湾 農業は日本と同様に高齢化や自給率低下に悩んでおり、生産性向上と持続可能性の確保が急務となっている。

出典:Adobe Stock


こうした背景から、台湾政府は2017年以降「スマート農業プログラム」を国家戦略として推進し、農業の現代化に乗り出した。小規模農家でも先端技術を活用して生産効率を高め、消費者が求める安全・高品質な農産物を安定供給できる体制を築くことが目的である。

具体的にはスマート生産(先端技術による生産管理)とデジタルサービス(農業データプラットフォーム)の二本柱で、孤立しがちな農家をネットワーク化し、生産から流通まで一貫した効率化を図っている。政府はこれに莫大な予算を投入し、各地で実証実験や補助金制度を展開中だ。台湾のスマート農業市場への期待値は極めて高く、「効率・安全・低リスク」を兼ね備えた新時代の農業モデルの創出が目指されている。本記事では、そうした台湾のスマート農業の現状と具体例を紹介し、東南アジア 市場調査の観点から日本企業が台湾市場に参入する際の成功要因・注意点を分析する。

台湾におけるスマート農業の成功事例:地元企業によるスマート農業の革新

台湾国内では、スタートアップ企業を中心にスマート農業の成功事例が増えている。

智食良果(Zhi Shi Liang Guo)

智食良果(Zhi Shi Liang Guo)という地元企業は、農場向けのIoT環境モニタリングと遠隔制御システムを提供している。各農場のニーズに合わせたカスタマイズ型ソリューションを構築し、センサーで植物の生育環境や土壌状態をリアルタイム監視する仕組みだ。農家はスマートフォンのアプリ(台湾で普及する通信アプリ「LINE」経由)でデータを確認し、遠隔から最適な栽培管理を実行できる。

これにより、生産性向上とコスト削減、さらには環境負荷低減を同時に実現しており、利用農家では収量増加や省力化といった成果が報告されている。例えば、ある導入事例では水と肥料の使用量をそれぞれ75%・30%削減し、農薬使用も年間10万台湾ドルの節約につながったという。カスタムメイドのIoTソリューションで持続可能な農業経営を支援する同社の取り組みは、台湾スマート農業の代表的成功例の一つだ。

DataYoo

精密農業(プレシジョン・ファーミング)の分野でも革新的な事例が生まれている。台湾・シンガポール拠点のスタートアップDataYoo社は、衛星データとAIを活用したリモートセンシングプラットフォーム「FarmiSpace」を開発した企業である。このプラットフォームではドローンや地上センサーを使わずに、人工衛星の高解像度画像と独自のAI解析で圃場のモニタリングと生育予測を行うことが可能だ。

  • URLをコピーしました!
目次