【AIツール最前線】アジアで躍進するAI文字起こしサービス「Notta」「Plaud」の最新動向

はじめに
近年、AI文字自動書き起こしツールはビジネス現場で急速に普及しつつある。特にアジア市場では、中国・韓国・日本をはじめ東南アジア諸国でも需要が高まっており、グローバル対応の多言語機能を持つツールが注目を集めている。音声認識技術の精度向上とDX推進の潮流を背景に、会議やインタビューの記録作業を自動化し、生産性を飛躍的に高める動きが活発化している。
ここでは成長著しい代表的ツールとしてNottaとPlaudに焦点を当て、そのサービス特徴と成功事例を分析するほか、中国のiFLYTEK製AIボイスレコーダーなども紹介する。さらに得られた知見から、アジア市場向けの導入効果や成功要因を考察する。
Notta:中国人起業家が日本で仕掛ける、次世代AI文字起こしツール
Notta(ノッタ)は日本企業が提供するクラウド型AI文字起こしツールで、すでに国内外の多くのユーザーに支持されている。創業者兼CEOであるRyan Zhang(ライアン・チョウ)氏は、中国出身の起業家で、かつて中国最大手の自転車シェアサービス「モバイク(Mobike)」の共同創業者としても知られている。その後、AI分野での起業に挑戦し、日本でNottaを設立、サービスは主に日本国内向けに開発・運用されている。
Nottaは、ウェブブラウザやスマホアプリで利用でき、日本語を含む58言語に対応した翻訳機能を備えている。主要機能として、会議の録音から自動で議事録を作成するだけでなく、AIによる要約生成や会話検索、カレンダー連携による会議予約同期など、会議DXを促進する多彩な機能を提供する。導入実績としては、大手企業から政府・自治体・教育機関まで幅広く普及し、累計利用者は1500万人超、導入企業は5000社以上にのぼっている。料金体系も無料プランから法人向けまで柔軟に用意されており、コストパフォーマンスの高さも評価されている。日本市場での成功を足がかりに、Nottaは英語など多言語対応を武器にアジア市場での展開も視野に入れている。
Nottaを導入した国内企業の事例では、会議にかける時間削減と生産性向上が報告されている。ある日本企業では、取締役らが1日1~2時間会議に参加し、従来は1時間会議後に2~3時間かけて議事録を作成していた。Notta導入後は録音から文字起こしが自動化され、議事録作成に要する工数が大幅に軽減された。
導入担当者は「自社で音声認識ツールを開発したが精度や利便性に満足できず、Nottaの完成度の高さで生産性が向上した」と評価している。特に、日本企業ではセキュリティ上オフライン環境を重視するケースや、専門用語辞書機能による精度向上など現場ニーズに対応できる点が好評だ。このように、会議録作成時間の大幅削減と共有性の向上がNotta成功の要因となっている。
Plaud:米国発デバイス連携型ツールのグローバル展開
Plaud(プラウド)は米シリコンバレー発のAIノートテイキング・ツールで、専用デバイス「Plaud Note/NotePin」とスマホアプリで構成される。デバイスは薄型軽量で30時間録音可能、ノイズキャンセリングや通話録音モードを備える。
クラウドでは112言語対応の高精度文字起こしと要約機能を提供し、専用アプリで音声・画像・ハイライトを統合管理できる。また、ISO/IEC 27001やHIPAAなど厳格なセキュリティ基準に準拠しており、ヘルスケアなど業界でも安心して利用できる。Plaudの強みは、グローバル対応の多言語・要約機能 と デバイスによる手軽さであり、海外出張や多言語会議での利用にも適している。
Plaudの実際の事例として、マレーシアの整形外科医Dr. William Choo氏による医療現場での活用がある。多民族・多言語社会であるマレーシアでは患者と医師の間で言語ギャップが発生しやすいが、Plaud NotePinで診察内容を録音・文字起こし・要約し、患者や家族に共有することで理解度を大幅に向上させている。患者は診察で伝えられた内容を正確に後から確認できるようになり、医師は面談に集中できるようになる。Dr. Choo氏は「Plaud NotePin導入で患者との対話に専念でき、診療内容の共有も容易になった」と述べ、医療現場でのコミュニケーション改善と効率化に寄与している。
また米国のIT企業RELEX Solutionsでは営業部門でPlaudを導入し、対面・オンライン会議の議事録記録を自動化した。営業担当のKevin氏は「Plaudのおかげで会話に専念でき、議事録や次のアクションのタスク化も自動化された。商談後のフォローが早くなり成約速度が向上した」と効果を語る。チーム全員が要約ノートを共有することで情報共有の齟齬もなくなり、生産性向上に結び付いている。これら事例から、多様な言語・文化が交錯する環境でも言葉の壁を越えて情報共有できる点がPlaudの成功を支えているといえる。
iFLYTEK VOITER:中国発、ハード×オフライン重視のアプローチ
中国市場ではiFLYTEK(科大訊飛)のAIボイスレコーダー「VOITER」が大きく普及している。VOITERシリーズは完全オフラインでも音声認識が可能な点が特徴で、中国国内で約40万台を販売した実績がある。主に企業会議や教育現場、報道現場で導入され、ユーザーからは「操作が簡単で誰でも使え、会議の議事録作成時間が大幅に削減された」「オフラインで高精度な録音・文字起こしができ、社内セキュリティポリシーにも適合する」といった声が上がっている。

法律事務所や自治体、大学、建設業界でも導入事例が報告されており、オフライン対応×高精度音声認識の組み合わせが現場に受け入れられている。特に高齢の記者や忙しい医師がVOITERで取材・診察録音を効率化し、文字起こし時間を従来の半分以下に短縮した例もある。中国発のハードウェア+ソフト統合ソリューションが多彩な業界を牽引している好例である。
導入成功の共通要因と市場展望
以上の事例から、AI文字起こしツールが成功する要因として以下が浮かび上がる。
・多言語対応とグローバル展開:アジア市場では英語の他、中国語・韓国語など多様な言語が飛び交う。Plaudの112言語対応やNottaの58言語対応など、言語バリアを克服する機能が受け入れられている。翻訳・要約機能を組み合わせたツールは、海外マーケティング資料作成や多国間会議にも活用できる。
・既存業務との親和性:会議・商談・講義などの音声を取り込むだけで議事録が自動生成されるため、導入のハードルが低い。Zapier連携やCRM同期などによって他システムと連動できる点や、複数デバイス間で同期する仕組みも評価されている。結果として、導入企業は記録業務負担の軽減と、データ蓄積による分析活用を同時に進められる。
・セキュリティ・オフライン対応:政府機関や医療機関などでは、データセキュリティが重要な課題となる。NottaやPlaudはISO/HIPAA準拠をアピールし、VOITERは完全オフライン動作を可能にすることで、特に中国・日本の企業・官公庁での導入が加速している。
・コストパフォーマンス:AIモデルの高度化で文字起こし精度は上がっているものの、ランニングコストが課題になりやすい。しかしNottaは他社より安価な料金設定を打ち出し、Plaudも初期機器費用はかかるものの、月額で利用できる文字起こしの利用可能量が多く、コスト効果を強調している。経済性の高さはツール選定の決め手となる。

今後、アジアではハイブリッドワークやグローバル会議の増加により、これらツールの需要はさらに拡大すると予想される。例えば、オンライン・オフライン双方の会議を高精度に録音してAIが自動で要点抽出するなど生産性向上につながる機能が次々と追加されており、競争力の高いサービスが市場を席巻していくだろう。
終わりに:市場調査と導入検討の重要性
AI文字起こしツールは単なる作業効率化に留まらず、情報共有の民主化や言語障壁の解消を通じて企業の競争力を高めるポテンシャルを秘めている。ビジネスの海外展開を図る企業にとって、現地言語対応やローカルニーズの把握は不可欠であり、上記のNottaやPlaud、iFLYTEKの例はその好例である。
これら先行事例を参考に、自社に最適なツール選定や業務プロセス改革を進めることが重要だ。海外市場調査においても、現地のデジタルツール動向やAI導入事例を前もって把握しておくことが、海外展開を成功させるうえで不可欠である。
情報参照先:
- PR TIMES|Notta、「2か国語 リアルタイム文字起こし・翻訳機能」をモバイルアプリに搭載へ|(アクセス日:2025年11月27日)
- Notta公式WEBサイト|Nottaに議事録、報告書作成をお願いして、生産性を向上!|(アクセス日:2025年11月27日)
- PR TIMES|AIボイスレコーダー「PLAUD.AI」累計出荷台数“100万台”を突破!|(アクセス日:2025年11月27日)
- Plaud導入事例|Breaking barriers in healthcare: how Dr. William Choo uses Plaud.ai to transform patient care|(アクセス日:2025年11月27日)
- Business Wire|こんにちは!Otter.aiのAIミーティングエージェントが日本語に対応し、日本市場へ進出|(アクセス日:2025年11月27日)
- ケータイ Watch|Notta、2か国語のリアルタイム文字起こし・翻訳機能をアプリに搭載|(アクセス日:2025年11月27日)
- Forbes JAPAN|文字起こしとブレストに有用 AIレコーダーの利便性と限界を検証|(アクセス日:2025年11月27日)
- WEEL|AI議事録ツールOtterとは?使い方や機能、料金、日本語対応の可否まで解説!使ってみた感想も紹介|(アクセス日:2025年11月27日)
- アプリナビ.com|〖2025年版〗カカオトークの隠れた機能10選!知らないと損する便利技|(アクセス日:2025年11月27日)
- ロボスタ|「中国で40万台を販売した文字起こし機能付きAIボイスレコーダー」|(アクセス日:2025年11月27日)


