インドネシアEコマースで成功する秘訣とは?市場分析と進出戦略
はじめに
インドネシアでは、インターネットユーザー数が1億5,000万人を超え、モバイル決済の普及とオンラインショッピングの利便性向上を背景に、Eコマース市場が過去最高の成長を遂げている。政府のデジタル化推進政策やテクノロジー企業の投資も市場の成長を後押ししており、2024年のインドネシアEコマース市場は前年を大幅に上回る成長が推測されている。本稿では、インドネシアのEコマース市場の現状と今後の課題について解説する。
インドネシアのEコマース市場について
インドネシアのEコマース市場規模は、スマートフォンの普及と共に急成長を遂げており、2022年のEC事業収益は519億USD(約778兆8000億インドネシアルピア)で、ASEAN諸国の52%を占めている。
また、2023年にはECサイトでの取引は小売市場全体において約32%を占め、急速に市場が拡大していることがうかがえる。
Eコマース市場規模については、予測期間(2024~2028年)中に16.7%のCAGRで成長し、2023年の60.4億USDから2028年には130.9億USDに成長すると予想されている。
主要プラットフォームと競争状況
インドネシア政府は、国内デジタル経済を推進するために様々な支援政策を展開しており、その影響で国内外の企業が競争を繰り広げている。
インドネシアのEコマース市場では、Tokopedia、Shopee、Lazadaといったプラットフォームが激しいシェア争いを繰り広げている。特に、Shopeeは大規模なマーケティング投資により急速にシェアを拡大し、国内市場において影響力を増している。一方、現地ECサイトのTokopediaは物流ネットワークの強化を進め、地方都市や農村部での顧客獲得に注力している。
インドネシアEコマース市場におけるプラットフォーム別シェアは、2023年の時点でShopeeが41%、Tokopediaが28%、Lazadaが20%を占め、残りのシェアは他の小規模なプラットフォームによって分けられている。
主要プラットフォームと競争状況
ECの発展に伴い、インドネシアではEC物流スタートアップが相次いで誕生している。急成長するEコマース市場を支えるため、配送インフラと物流の効率化を目指して多様なサービスを提供する。主要企業としては、J&T Express、SiCepat Ekspres、Shipper、Waresix、Anterajaが挙げられる。それぞれ下記の独自の特徴を活かし、物流インフラの充実に貢献している。
- J&T Express
全国に広がる配送ネットワークを持ち、リアルタイム追跡や電子通知を活用したスムーズな配送を提供 - SiCepat Ekspres
Tokopediaなどの主要プラットフォームと連携し、即日配送や24時間対応の柔軟なオプションを提供 - Shipper
複数の物流会社と提携してEC事業者向けの配送マッチングプラットフォームを運営し、小規模事業者からの支持を獲得 - Waresix
倉庫管理とトラック輸送に特化し、地方と都市を結ぶ物流の効率化を支援 - Anteraja
先進的な追跡システムと独自アプリを通じて顧客体験を向上させ、SNSを活用したマーケティングで利用者を拡大
ECに関する政策
インドネシア政府はEコマース市場の成長を支援するために、デジタルインフラ整備やキャッシュレス社会の推進を行う。また、物流の効率化とともに、商品輸送の迅速化を図るための投資も進めている。
政府のEコマース支援
中小企業のデジタル技術の導入とオンライン販売力の強化を図るため、「UMKM Go Online」プロジェクトを実施する。デジタル技術研修やオンラインプラットフォームへのアクセス支援、金融サービスの提供を通して、インドネシアの800万の中小企業の起業家をオンライン市場へ参入させることに成功している。また、TokopediaやShopeeなどの大手Eコマースプラットフォームと連携し、オンラインマーケットプレイスでのUMKMの取引機会を拡大するなどの取り組みも行う。
インフラ整備
インドネシアは17,000以上の島から成り立つため、地域間の輸送コストが高いことが経済発展の障壁となっている。この問題を解決するため、インドネシア政府は以下の政策を行い、地域間の格差縮小や競争力強化を目指す。
Tol Laut政策
Tol Laut政策は、インドネシア政府が島嶼間の物流と交通インフラを改善するために2015年に発表した政策である。定期船サービスの導入や物流拠点の整備、補助金による低コスト運賃の導入等の取り組みを通して、国内物流の効率化と地方格差の是正を目指す。
NLE (国家物流エコシステム)の導入
NLEは、インドネシア政府が国内物流全体のデジタル化と統合化を推進する政策である。物流プロセスのデジタル化を進め、官民で連携することで、政府機関、物流事業者、輸出入業者、港湾など、物流に関わるすべての関係者が一元化されたプラットフォームで連携し、手続きの統一化・迅速化を目指す。
新商業大臣規定
上記のようにEC拡大への取り組みを推進する一方、近年は規制も強化している。
インドネシア商業省は2023年9月に新商業大臣規定を発表し、FOB価格100米ドル以上の商品のみ輸入を許可し、100米ドル未満の商品の販売を禁止した。これによってEC取引が減少し、インドネシア財務省関税局によると、2023年11月の越境電子商取引(EC)による輸入件数が10月の107万件から大きく落ち込み、前月比66%減の36万件となっている。
また同規定では、SNS経由で電子商取引(EC)を行う「ソーシャルコマース」を通じた商品の売買や越境ECにかかる新たな規制を定め、SNSプラットフォーム運営者に対して、商品・サービスのプロモーションのみを認め、EC機能をソーシャルメディアから切り離すように義務付けている。
今後のインドネシアEコマース市場のシナリオ
インドネシアのEコマース市場は今後も堅調に成長すると予想されるが、Eコマース市場のさらなる成長にはインターネット環境の改善やセキュリティ対策の強化が必要とされている。特に、サイバーセキュリティの課題が顕在化しており、オンライン詐欺やデータ漏洩対策が喫緊の課題となっている。また、都市部と地方部の格差も課題である。大都市圏ではすでに高い普及率を誇る一方で、地方ではインターネット接続の普及が十分でないため、アクセスが限定的である。今後は地方の市場開拓が成長の鍵を握ると考えられており、モバイル通信の拡充や物流ネットワークの強化が求められる。
課題と今後の展望
1. サイバーセキュリティと信頼性の向上
インドネシアのEコマース市場が成長する中で、オンライン詐欺やデータ漏洩といったサイバーセキュリティの課題も増加している。インドネシア政府はEコマースの安全性を向上させるための法整備を進めており、プラットフォームも独自にセキュリティ対策を強化している。今後、消費者から信頼を得るためには、より一層のセキュリティ対策が必要になるだろう。
2. 地方市場への浸透
都市部に比べて地方都市ではインフラ整備が遅れており、Eコマースの利用が都市部ほど浸透していない。物流やインターネット環境の整備が進むことで、地方市場が新たな成長の原動力となる可能性が高い。
終わりに
インドネシアはEコマース市場の成長が著しく、今後も拡大が期待される。一方で、デジタルインフラやセキュリティといった課題も抱えており、競争が激化する中での現地企業や政府の動向に注目が集まっている。インドネシアのEコマース市場に関心がある方は、最新の市場情報を提供するArchesにご相談ください。
情報参照先:
- International Trade Administration|Indonesia – eCommerce|(アクセス日: 2024年11月16日)
- JETRO|インドネシアのデジタル経済、2025年に1,460億ドル規模へ| (アクセス日: 2024年11月16日)