【海外市場調査】アジア発スマートヘアブラシ市場の最前線|電動×美容テクノロジーが変える東南アジアのヘアケア

はじめに
近年、Dysonやメイソンピアソンといった欧米ブランドとは一線を画し、アジア企業が電動・スマート・高機能ヘアブラシの分野で独自のイノベーションを起こしている。とりわけ韓国や中国、台湾のメーカーやスタートアップは、先端テクノロジーを駆使したヘアブラシや頭皮ケア機器を次々と開発しており、東南アジアを含む市場で大きな注目を集めている。
韓国市場:スマートブラシと頭皮ケアの先端事例
韓国では美容家電メーカーやスタートアップが、美容技術とIoTを融合した製品を展開している。
例えばSamsung社のC-Lab発のスタートアップであるBecon社は、手のひらサイズのスキャナーとスマートフォンアプリで頭皮コンディションを自宅診断できるデバイスを開発した。このスキャナーは毛髪密度や毛穴数、髪質、頭皮の敏感度、温度、湿度など10項目の頭皮健康指標を解析し、個々人に最適なケアを提案する。

また韓国のヘアサロンでも先端機器の活用が進んでおり、話題となった15ステップ頭皮トリートメントではガルバニック電流を流す特製ブラシを使用し、ブラッシングと同時に赤色・青色LED光を頭皮に照射してケア効果を高めている。赤色LEDは細胞ターンオーバーの促進、青色LEDは頭皮の雑菌ケアに寄与するとされ、こうした技術の導入は韓国発の頭皮ケア文化の先進性を物語っている。
中国・台湾市場:LED・イオン搭載ブラシの台頭
中国や台湾のメーカーも、高機能ヘアブラシ市場で存在感を高めている。多機能化が顕著で、LEDライト療法やマイナスイオン発生器、低周波によるEMS(電気筋刺激)やRF(ラジオ波)などを組み込んだ電動ブラシが次々と登場している。ある製品では、EMS・RF・LEDなど複数の機能を搭載し、ブラシ内部に育毛美容液を充填できる構造を持たせることで、頭皮ケアに特化した使い方ができるよう工夫されている。顔用アタッチメントを付け替えてフェイスケアにも使えるなど、一台で多目的に利用できる点も特徴である。
また台湾発の革新的事例として、Uffy社のスマートヘアブラシが挙げられる。同社は伝統的な台湾製ブラシに着想を得て、遠赤外線を放射する特殊な木製ブラシ「Acubrusher」を開発した。24K金メッキのピンから発せられる天然の遠赤外線効果で血行を促進するこのブラシは、台湾のクラウドファンディングで約1年間で1万本以上を売り上げ、総額1,100万NTドルの支援を集めた。素材設計の差別化によってヘアブラシの新たな付加価値を生み出した好例であり、職人技術とテクノロジー融合によるアジア企業ならではのアプローチといえる。
アジア企業が切り拓くスマートブラシ技術の新潮流
アジア企業によるスマートブラシには、いくつかの共通した差別化ポイントが見られる。まずスマホ連携・アプリ制御である。前述の韓国Becon社のように、ブラシやスキャナーをBluetooth等でスマートフォンと接続し、ユーザーの頭皮・毛髪データを可視化してケアアドバイスを提示する仕組みは、デジタル世代の消費者に強くアピールする。
またセンサー内蔵も大きな特徴だ。ブラッシングの力加減や回数、髪の状態を検知する各種センサーを組み込み、データに基づき最適なブラッシング方法をガイダンスするコンセプトは、世界初のスマートヘアブラシ「Kérastase Hair Coach」(仏ロレアルとWithings社が2017年発表)にも通じるものだが、こうした高度な機能を量産化と低価格化で実現しようとする動きにアジア企業が積極的である点が注目される。
さらに素材・機能の独自設計も見逃せない。遠赤外線放射素材や24K金コーティングといった素材技術の活用、あるいはLEDの赤青光やマイクロカレント電流を組み合わせて育毛・頭皮マッサージ効果を高めるなど、各社が独自のアイデアで付加機能を追求している。市場調査でも「頭皮の健康モニタリングなどスマート機能を搭載した製品開発」が差別化の鍵になると指摘されており、アジア発のこれら技術トレンドは今後グローバル市場にも波及していく可能性が高い。
東南アジアで広がるスマートヘアブラシ需要
こうした電動・スマートヘアブラシが東南アジア市場で注目される背景には、同地域の美容志向とデジタル受容性の高さがある。アジア太平洋地域全体ではヘアブラシ市場が今後も急成長を遂げる見通しで、2033年には市場規模64億ドルに達するとの予測もある。特に東南アジア各国では若年層を中心にスマートフォン普及率が高く、K-Beautyをはじめ先進的な美容トレンドに敏感な消費者が多い。高温多湿な気候ゆえの頭皮トラブル(脱毛やフケ・ベタつきなど)に対する関心も強く、効果的かつ手軽にケアできるスマートデバイスへの需要が高まっているのだ。

韓国や中国の最新美容家電がECプラットフォームを通じて迅速に流入・拡散する環境も整っており、スマートブラシが「次に試してみたい美容ガジェット」として認知されつつある。事実、韓国市場で培われたトレンドはアジア太平洋全域の指標になるとも言われており、東南アジアにおけるスマートヘアブラシ人気もこの延長線上に位置付けられる。
終わりに:今後の展望
電動・スマートヘアブラシ市場はさらに活発化すると予想される。技術の進歩によりセンサーや通信モジュールの低コスト化が進めば、より多くの機能を備えたスマートブラシが手頃な価格で提供されるようになるだろう。各社が競って差別化技術を投入することで製品の高度化が進み、ひいては消費者のヘアケア習慣そのものの高度化(データに基づくパーソナライズケア、ホームケアとプロケアの融合など)につながる可能性もある。
また環境意識の高まりから、サステナブル素材と先端テクノロジーを両立させた新世代のヘアブラシ開発もテーマとなるだろう。日系企業にとっても、こうしたアジア発の動向は新規事業創出や製品開発のヒントとなり得る。現地市場の最新トレンドを的確に捉え、テクノロジー×美容のニーズに応える製品戦略を立てることが求められるである。その際、自社だけでのリサーチが難しい場合は現地パートナー企業や専門調査機関との連携を検討し、蓄積された知見を活用することが望ましい。アジアのスマートヘアブラシ市場は今まさに成長途上にあり、適切な情報収集と戦略立案によっては大きなビジネスチャンスをつかめるだろう。
情報参照先:
- Samsung Global Newsroom|How C-Lab is Preparing for a Future Full of Potential – Part 1: C-Lab Inside|(アクセス日:2025年10月13日)
- MarketResearchIntellect|グローバルなスマートヘアブラシ市場規模、アプリケーションによる成長(セルフクリーニングブラシ、熱保護ブラシ、デンタングルブラシ、マッサージブラシ)、製品(ヘアケア、頭皮の健康、スタイリング、髪の成長監視)、地域の洞察、予測|(アクセス日:2025年10月13日)
- マイベスト|徹底比較 電気ブラシのおすすめ人気ランキング(本当に効果が期待できるのは?2025年9月)|(アクセス日:2025年10月13日)
- Fashionsnap.com|2023年ベストバイ 川谷絵音が今年買って良かったモノ|(アクセス日:2025年10月13日)
- Grand View Research|Beauty Tech Market Size, Share & Trends Analysis Report, 2025–2030|(アクセス日:2025年10月13日)