【海外ビジネス成功事例】「Oatly」「Goodmylk」の成功事例から学ぶ、インドの植物性ミルク市場の急成長と日系企業における参入機会

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はじめに

近年、世界的な健康志向や環境意識の高まりを背景に、プラントベース食品への関心が急速に拡大している。特に植物性ミルクは、乳製品に対する健康上の懸念や環境負荷軽減の目的から消費者の間で人気を集めている。東南アジアにおいてもその市場は目覚ましく成長しているが、その中でも巨大市場インドでの成長が特に著しい。本記事では、インドの植物性ミルク市場の可能性と日系企業の参入機会について解説する。

インドの植物性ミルク市場拡大の背景

インドは世界最大の菜食人口を抱える国として知られているが、実は完全な動物性食品を避ける「ヴィーガン」は少ない。多くのインド人は宗教的・文化的理由から肉や魚は避けるものの、乳製品は重要なタンパク源や儀式の一部として伝統的に消費されている。

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ヒンドゥー教徒にとって乳製品は宗教的な意味合いを持ち、牛乳やギー(バター精製油)は神聖な供物として頻繁に使われる。しかし近年、健康意識の高まり、乳糖不耐症への認識の広がり、都市部での欧米化したライフスタイルの浸透により、徐々に乳製品以外の代替品への需要が高まっている。また、環境への配慮や動物愛護意識の高まりも都市部の若者を中心に広がっている。こうした背景が植物性ミルク市場の急速な拡大を後押ししている。

インド政府もまた、持続可能な食品産業の推進を政策的に支援している。その背景には環境汚染や気候変動への対応、農村部の経済活性化、食料安全保障の向上などが挙げられる。特に農業従事者が多いインドでは、持続可能な食品産業の育成が農村経済の発展や雇用創出につながると考えられている。また、国際的な持続可能性目標(SDGs)の達成に向けても、政府はプラントベース食品の普及を重要な政策の一つとして位置付けている。

シンガポールの「新たな」食品加工企業

インド市場では、すでに植物性ミルクを手掛ける企業が成功を収めている。その代表例として、国際的ブランドのOatlyと地元企業のGoodmylkが挙げられる。

Oatly(オートリー)

Oatlyはスウェーデンで設立された世界的に有名なオーツミルクブランドで、インド市場に参入した当初から明確に都市部の若年層をターゲットに据え、環境への意識を強調したマーケティング戦略を展開した。Oatlyの成功の秘訣は、インドの都市部で広がる環境保護や健康志向の潮流を的確に掴み、InstagramやFacebookなどSNSを効果的に活用した点にある。

具体的には、若年層に人気のインフルエンサーを起用したプロモーション活動や、エコフレンドリーなライフスタイルをテーマにしたコンテンツを積極的に発信することで、ターゲット層とのエンゲージメントを高めた。中でも特徴的なのは、「偽らないブランドストーリー」。SNSや広告では”嘘をつかないOatly”が、さまざまなコンテンツによって表現されている。また、ユーザー生成コンテンツ(UGC)を促進するキャンペーンなども展開し、消費者自身が環境問題への意識を高める機会を提供した。

Goodmylk(グッドミルク)

インド発のスタートアップ企業であるGoodmylkは、インド人消費者の味覚や日常的な食習慣を深く理解した製品開発を行っている。


具体的には、インドで伝統的に親しまれているチャイ(スパイス入りミルクティー)や、ミルクを使ったスイーツに適した製品を開発した。例えば、植物性ミルク特有のクセを抑え、乳製品と同じようなクリーミーな食感を再現することで、消費者の日常に自然に取り入れられるよう工夫を凝らしている。また、手頃な価格帯で商品展開を行い、オンライン販売やサブスクリプションサービスを充実させるなど、多様な販売チャネルを通じて消費者の利便性を高めている。

両社の事例から学べる重要なポイントとして、消費者の文化的背景や日常的な食習慣を十分に理解した商品開発やマーケティング戦略が極めて重要であると言える。

日系企業が参入する上での機会と課題

日系企業がインドの植物性ミルク市場へ参入する上で注目すべきは、日本の高い技術力と製品の安全性・品質への信頼である。インドの消費者は海外ブランドに対する信頼性が比較的高く、日本ブランドはその中でも特に品質面での優位性を持っている。

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また、インド市場で成長する植物性ミルク市場の中でも未だ十分に開拓されていないライスミルクや玄米ミルクなど、日本の食文化に根差した新しい商品ラインを展開することも考えられる。

しかし、課題があることも忘れてはいけない。インドは広大かつ多様性に富む市場であり、地域ごとに食文化や消費者の嗜好が大きく異なるため、進出にあたっては緻密な市場調査と地域特性を踏まえたマーケティング戦略が求められる。流通網の構築や価格設定における競争力の確保も重要な課題となる。

終わりに——インド植物性ミルク市場への戦略的参入を

インドの植物性ミルク市場は今後も大きな成長が期待される有望市場であり、早期の参入による市場の獲得が競争優位性につながる可能性は高い。OatlyやGoodmylkの成功事例が示すように、市場理解とターゲットの明確化が成功の鍵となる。

Archesでは、市場調査からマーケティング戦略の策定まで包括的にサポートしております。インド市場のさらなる情報収集や参入方法についての具体的なご相談をご希望の方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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この記事を書いた人

Kitagawa

記事編集クリエイター

趣味は旅行で、アジアを中心に様々な国を訪れています。
現地の人々の生活や文化に触れることで、新しい視点や気づきを得られるのが楽しみです。
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